機械技術研究所
要 覧 1980
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基 礎 部
エネルギ技術
省資源・省エネルギ時代の要請にこたえ,エネルギの有効利用を目ざして,革新的な熱輸送・熱交換技術,エネルギ変換技術の研究を行っている.ヒートパイプ,高温熱交換器伝熱面,スターリングエンジン,高効率推進装置の研究を強力に推進している.さらに将来到来を予想されるエネルギ危機に備え,新エネルギ技術として風力変換システムの研究を行っている.
内燃機関の大気汚染成分の排出低減と高効率化
エンジン排気による大気汚染と騒音公害の防止,燃料消費率の改善の研究を進めている.このような特性を本質的に決定づけるエンジン筒内燃焼を究明し,燃焼制御の立場から性能向上を得る研究と,クリーンエネルギとして,また石油の代替燃料として水素を用いるエンジンの研究を行っている.さらに高効率ガスタービン燃焼器の研究を進めている.
海底石油生産システム
石油資源の可採掘範囲を拡大することを目的とする海底石油生産システムに関連して超音波を利用した海中固定物体への接近制御系の研究開発を進めている.
トライボロジ
種々の環境や広い使用条件で,表面の摩耗をへらし摩擦を制御することを目的とし,次のような材料,表面加工,ならびに潤滑法を研究している.例えば,新しい真空蒸着法での耐摩耗潤滑性被覆法,腐食法による新しい表面加工,プラスチックや金属ベースの新しい複合材料,油への添カロ剤などを工夫している.
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スターリングエンジン
スターリングエンジンは水素あるいはヘリウムなどの動作気体の周期的な膨脹と圧縮によって動作する再生器付の外燃機関であり,熱効率が高い,多種燃料の使用が可能,排出ガスがクリーン,低騒音といった数々の特徴をもっている.図のように,エンジンは基本的には2組のピストンとシリンタ及びヒータ,クーラ,再生器の三つの熱交換器によって構成される.写真は市販の空気液化機を改造した実験装置であり,これを用いて高温エンジン(電気加熱)及び冷熱エンジン(液体窒素冷却)としての運転特性を研究している.
化学レーザ
化学レーザは反応の過程において生じる原子あるいは分子状態の反転分布を利用してレーザ発振を行うもので,光へのエネルギ変換効率の良いことから近年注目され始めた.そのなかでも反応化学種を高速流中で急速に混合,反応させる形の化学レーザは炭酸ガスレーザと比較し得る大出力レーザとして期待されている.
本研究では,大出力化学レーザの開発を目的として,衝撃波管内に模擬混合装置を作り,混合領域における反応化学種の拡散速度,反応速度などの出力性能に関わる基本的性質を研究している.
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高温下における熱交換器伝熱面の性能向上
製鉄所等で排出される高温廃ガスからの効率的な熱回収をはかるには,使用される熱交換器の伝熱面の性能向上が極めて重要である.この高温気体伝熱試験装置は強制対流と固体幅射が共存する場における伝熱面を800℃以下の温度範囲で試験する装置である.装置は図(右)のような構成をもち,予熱空気と伝熱面との間の伝熱特性を調べている.
EHDヒートパイプ
EHD(電気流体)ヒートパイプの構造は,図のように線電極を数本張った管内にフレオン等の誘電液体を封入しただけの簡単なものである.しかしEHD効果により,毛細管ウイックを用いた通常のヒートパイプに比べて高いポンピング圧力をもたせることがてきるため,熱輸送量が大きくかつ制御性のある高性能ヒートパイプとして実用化が期待されている.
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ディーゼル燃焼時の煤・NOxの低減
ディーゼルエンジン排気による大気汚染の防止を図ることを目的に低スモーク,低NOx燃焼法を研究している.燃焼室の形状や壁温,燃料噴射法等の排出特性に及ぼす影響を調べて低排出化の手法を得るため,観察容易なモデル燃焼室を用いた実験とエンジンによる運転試験を並行して進めている.
高圧雰囲気中の燃焼制御
高効率ガスターピン燃焼器の研究開発の一環として,高圧力状態や低酸素濃度状態など特殊条件下における燃焼制御および火炎ふく射に関する研究に着手した.
図は試験装置の概要で,高圧ボンベを空気源とし,1秒間程度の燃焼実験を行うものである.この実験データから従来のガスタービン燃焼器設計法を修正・補完する.
水素燃料原動機
水素の現用火花点火機関への燃料としての適用性を把握するために,単筒実験機関による各要素の改良実験を進めている.異常燃焼の防止,出力向上化及びNOx低減化を意図して水素専用弁(第三弁)を有する機関を試作し,その駆動方式の技術的な検討と共に,最適運転条件を追究している.
また,燃焼室内での混合,燃焼特性を解明するため,衝撃波管・燃焼室模型などによる基礎的実験も並行して進めている.
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風力変換システムの研究
サンシャイン計画における新エネルギ技術シーズの研究の一環として,当所では風力エネルギを効率よく利用するために,ローダ・ブレードの空力性能,ブレードのピッチ角制御,動力伝達機構などの風力変換システムを構成する要素およびシステムの研究を行っている.
写真は,ジャイロミル型風車の空力性能の解析に用いる実験用模型である.
吹出し風洞の最大風速は20m/sであり,開口 部の寸法は1m角である.この風洞は自然風の 変動と大地境界層を模擬できる機能をもつ.
海中固定物体への接近制御技術の開発
海底石油生産システムの安全性・経済性に係わる基本的な共通技術として,マニホールド等海底設備の保守・点検に必要な機器を目標位置に迅速かつ正確に沈降・接近させるための技術を開発している.
これは目標物体からの超音波をサービスカプセル上の受波器群で受波し,信号処理により目標物体の位置や映像情報を得て,サービスカプセルの制御に資するもので,超音波の到来方向を検知する粗方向制御,超音波映像も得られる精方向制御,さらに距離・接近速度制御で構成される.
ATPの空力特性の研究
高速ターボプロップ機は省エネルギ・騒音低減効果が高く,将来の航空機として期待されている.ターボプロップ機はマッハ数0.8付近で巡航するもので,その推進装置がいわゆるATP(Advanced Technology Propeller)である.ATPは遷音速特性のすぐれたスーパークリティカル翼型を用いることによって従来のプロペラの高亜音速時の限界を突破しようという設計思想に立つもので,ブレード先端は極めて薄く,かつ後退角を有する特異な形状になると予想される.当研究所では,ATPの空力上の基本設計技術の確立を図るため,複雑な3次元流れ場を形成するATPの空力解析を行っている.
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耐摩耗潤滑表面作成の研究
耐摩耗性のよい材料や潤滑方法を開発するために,試作した試料について,種々の試験機により広汎な使用条件でその摩擦摩耗特性を調べている.一例としてオルゼン型摩耗試験装置を写真(A)に示した.また.材料の構造や性質と摩擦摩耗の関係を走査オージェ分析器(B)や,走査電子顕微鏡内での,その場観察装置(C)でしらべている.銅の摩耗過程観察結果もあわせて例示した.