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平成12年度03月28日
通商産業省 工業技術院
機械技術研究所
統括研究調査官室

 


 

「ミミックセンサによる血流量の測定」

 

[概 要]

 

 通商産業省 工業技術院 機械技術研究所は、高齢者や身障者の体調を遠隔モニタリングするため「血流センサ」を組み込んだ電話機を試作・実験してその実用性を示し、「体調の遠隔モニタリングシステム」としての実用化の道を拓いた。

 高齢者や身障者の体調を、ストレスを与えることなく遠隔モニタリングするシステムの開発の一環として行っているもので、不自然さや違和感を意識させないセンサ(ミミック(擬態)センサ)を電話機に組み込んで電話中の血流量の測定を行い、測定データと体調との関連性の解析を試みた。その結果、血流量のピーク間隔変動を示す脈波が、与えた拘束条件の状態によって変動することが分かった。すなわち、体調を測定するために必要な情報が、間欠的にではあるが脈波の変動として継続的に測定できることが分かった。今後は血流量変化と体調の関係、血流以外の生理情報の利用、受話器以外の日用品への適用について検討を行っていく予定である。

 

日用品に意識させないセンサを組み込んで健康監視システムとして活用する

 

 


 

「ミミックセンサによる血流量の測定」

 

機械技術研究所
ロボット工学部 福祉応用研究室
永田 可彦

1.はじめに

 高齢社会が現実となり、ハンディキャップを持った人の自立生活が話題になる中、一人で生活している高齢者や身障者の健康管理は極めて重要な課題となっている。しかし高齢者や身障者が自発的に健康状態を検査し、自らの健康を管理していくことは本人への負担が大きく、日常的に継続していくことは困難であると思われる。この問題を解決するためには、高齢者や身障者の健康状態を日常生活の中で自動的に検査していく技術が必要である。しかしながら、これまでに開発された在宅健康管理システムは、その外観から「監視されている」という印象を与えてしまうため、広く使われるには至っていない。ロボット工学部福祉応用研究室では、センサを生活用品の中に埋め込み目立たなくすることで、違和感を感じず、日常生活を乱すことなく検査ができる健康管理システムを提案するとともに実用的な検査システムについて研究している。

 今回は、在宅における平常状態時の体調測定を可能にするシステムの具体例として、受話器に「血流センサ」を埋め込んだ電話を試作し、測定実験を実施してその有効性についての解析を行った。

 

2.ミミックセンサとは

 我々の提案しているシステムは、健康状態を常時観察するのではなく個人の生活パターンを考慮し、日常的に必ず立ち寄る場所や触れる箇所にセンサを設置し、間欠的ではあるが、毎日データを測定しようとするものである。このセンサを配置する際には、生活用品の中に目立たないように埋め込むことで、「監視されている」という意識を与えないように配慮するものである。我々はこのような目立たないように配置されたセンサを自然界の昆虫の擬態などからヒントを得てミミックセンサ(擬態センサ)と呼ぶことにした。

 生活を乱さない在宅健康管理を考えると、老廃物等を採取して高度な化学機器分析を行うために分析センターへ定期的に送る方法もあるが、物質の採取・配送が主となり簡便な検査とは言えない。最近では、マイクロマシン技術の応用例として超小型の化学分析センサも考えられているが、我々は光学的な信号や熱力学的な信号処理を対象とした健康状態を観察する方法中心にとして検討を進めている。このような対象として、血圧、心拍数、顔色などを利用することを考える。血圧や心拍数は指先の脈波を測定することで観察できる。さらに血中酸素濃度を測定することにより、呼吸や循環器障害の程度を観察することが可能となる。また顔色などは通常のビデオカメラを用いることで観察が可能である。これらのセンサ類を生活用品の中に埋め込んで利用できる多くの例(図1)が考えられる。湯飲み茶碗や電話の受話器の特定部位に脈波センサを埋め込み、心拍数や血圧を測定する。テレビを見るために座った時やトイレの便座に座った時に正対する場所にカメラを埋め込み、顔色等の変化を定期的に観察する。などである。

図1

 

 

3.血流センサを使った血流量の測定

 ミミックセンサとして、血流量を測定できるセンサを受話器に埋め込んだ(図2ー1)。受話器を握った時にセンサの検出部(直径10mm、厚み3mm)が指先にあたるように配置した(図2ー2)。センサは、皮膚下約1mmの半球形部分に入射し、体組織で反射してきたレーザー光のドップラーシフト量から血液の流速と流量を測定するものである。

図2ー1

 

図2ー2

 

 体調の変化を与える要素として、受話器を持ちながら、(a)受話器の動きを抑えるため頭と手の動きを拘束して発声を行わない、(b)頭と手の動きを拘束して発声を行う、(c)頭の動きを自由にして、発声を行う、という条件を採用した。(a)、(b)、(c)の条件について、血流量の時間変化を25秒間測定した。得られた血流量の時間変化を脈波と考えて、6秒から19秒の間のピーク間隔の平均を計算した。図3にその結果を示す。黒い四角()が平均値であり、上下に伸びるヒゲ部は標準誤差である。(a)から(c)へと条件が変わるに従い平均ピーク間隔が長くなっている。統計的解析を行った結果、発声を行った場合に脈波間隔に有意な差(信頼水準95%)が現れることが分かった。これは発声を行うことで血流量が変化したためと考えられ、脈波のピーク間隔のゆらぎに現れる、体調測定を行うために重要な自律神経の働きと関連ある情報として利用可能と考えられる。

図3

 

 

4.まとめ

 ミミックセンサの例として、体調測定のための情報を得るために有益と考えられる血流量の測定を可能にするセンサを電話の受話器に埋め込み、脈波の測定を試みた。その結果、電話中における血流量のピーク間隔変動を観察することができ、それが電話をしている人の状態によって変化することが分かった。この実験によって体調を測定するために必要な情報が、間欠的にではあるが継続的に測定できる可能性を示すことができた。今後は血流量変化と体調の関係、血流以外の生理情報の利用、受話器以外の日用品への適用について検討を行っていく。

 


[発表者]

機械技術研究所 ロボット工学部 福祉応用研究室 永田 可彦

         Tel: 0298-61-7162, Fax: 0298-61-7275

         nagata@mel.go.jp

[連絡先]

機械技術研究所 統括研究調査官室 千阪文武/石塚一則

         Tel: 0298-61-7034, Fax: 0298-61-7033

         chisaka@mel.go.jp,ishizuka@mel.go.jp

 

 


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