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平成12年度02月08日
通商産業省 工業技術院
機械技術研究所
統括研究調査官室

 


 

MGC超高効率タービンシステム技術の先導研究

基礎技術部 材料物性研究室 平野 一美
TEL:0298−61−7066

 

機械研NEWS 2000 No.2より

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はじめに 

 MGC材料(Melt Growth Composite:融液成長複合材料)と名付けられた夢の超耐熱材料が出現した(1).鋳造可能な単結晶酸化物系セラミックスのIn−Situ共晶複合材料であり,Al2O3 / Y3Al5O122O3 / GdAlO3(GAP)及びAl2O3/Er3Al5O12(EAG)等がその代表例として挙げられる.相界面の整合性も良くアモルファス相の生成,析出物や欠陥等が極めて少ない三次元ネットワーク構造を有している.融点直下まで室温強度を保持する革新的な超高温強度特性を有しており,超高温において転位による塑性変形能を示すが,極めて高い降伏応力や強度レベルを維持する.また,鋳造速度をコントロールして組織を微細化しても耐クリープ性に優れ,超塑性現象も発現しない.さらに,大気中,超高 温/長時間(1700℃/1000hr)暴露後も組織成長や酸化重量の増減がほとんどなく,優れた耐酸化性を示す.このような耐熱材料としてのポテンシャルに加えて,鋳造が可能なことからニアネットシェイプ成形等による大型複雑構造要素への適用性も考えられるなど,従来の焼結セラミックス材料と比較して複雑形状付与性や寸法安定性等に優れる特徴を有している.ただし,酸化物系セラミックスの宿命として破壊靭性,耐熱衝撃性が小さいので,高靭性化や耐熱衝撃性を改善する材料設計やプロセス技術開発が今後のMGC材料の実用化/商用化の鍵を握っている.

 一方,地球環境問題の解決を図り,タービンシステムのなお一層の高性能化,省エネ化を達成するための主要な技術課題の一つは運転温度の高温化であり,超高温材料とその構造要素適用化プロセス技術開発の成否にかかっている.

 かかる観点から,平成10年度から通商産業省工業技術院NSS計画の先導研究として,MGC材料を適用する超高効率タービンシステム技術の研究開発が開始された.本先導研究は(1)MGC材料の高性能化技術及び製造プロセス技術(2)高温特性発現メカニズムの解明および(3)システム統合化研究からなり,MGC材料を適用したタービンシステム技術の確立に向けた技術開発課題の抽出ならびにその解決アプローチ等の検討により,(4)MGC材料の特性を最も活かしうる超高効率タービンシステム開発計画の企画・立案を目指している.


 

添付図、写真の説明

 

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図1に材料の微視組織レーザー顕微鏡写真を示す.

 

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図2(a)〜(c)にC面におけるYAG相,Al2O3相およびYAG/Al2O3界面におけるビッカース圧痕による典型的なき裂進展の様相を示す.

 YAG相ではき裂は進展し易く,ラテラルクラックが比較的発生しやすい.Al2O3相ではYAG相と比較してき裂進展が小さく,界面付近ではき裂が界面沿って進展していく傾向が認められる.

 

H12-2MGC-3s.jpg

破壊靭性の二母数ワイブル分布を図3に示す.いずれの採取方位においても破壊靭性が最も小さいYAG相支配,中間の界面特性支配及び破壊靭性が最も大きいAl2O3相支配の混合型ワイブル分布特性を示す.

 

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疲労き裂進展曲線を図4に示す.R−L方位,すなわち,き裂が凝固方向と平行に進展する場合,比較的スムースなき裂進展曲線を示すのに対して,L−C方位,すなわち,き裂進展が凝固方向と垂直な場合,き裂は相界面に達すると一旦停留したり界面に沿って進展した後,疲労損傷の蓄積ないしは荷重振幅の増大により再進展を繰返す,顕著な不運続疲労き裂進展挙動を示す.

 

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疲労き裂進展速度da/dNと最大応力拡大係数Kmaxとの関係を図5に示す.比較的スムースなき裂進展挙動を示したR−L方位について,バラツキはあるもののda/dNとKmaxの間には一義的関係が成立し,da/dN=C Kmaxmのべき乗則で表示できる.

 

H12-2MGC-6s.jpg

MGC材料性能からみた1700℃級無冷却方式タービンシステム実現の可能性を評価するための模擬実環境材料試験評価装置の開発・整備を進めている.図6に模式的に示すように,Slow Strain Rate試験装置をベースに超高温・高圧水蒸気を発生する環境シミュレータを付属した装置構成となっている.本試験装置によりタービン燃焼環境等を模擬した超高温・高圧水蒸気中の過酷環境下においてMGC材料の疲労やクリープなどの長期耐久性の評価試験が可能である.

 

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MGC材料を適用すれば,1700℃級無冷却方式のタービンシステムも可能となる.図7に一例を示すように,1700℃級無冷却方式タービンシステムの総合熱効率についてのフイージビリティによれば,15%以上の大幅な熱効率向上が見込まれる(7)

 

 

 

 

[発表者]

機械技術研究所 基礎技術部 材料物性研究室 平野 一美

         Tel: 0298-61-7066, Fax: 0298-61-7167

[連絡先]

機械技術研究所 統括研究調査官室 千阪文武/石塚一則

         Tel: 0298-61-7034, Fax: 0298-61-7033

         chisaka@mel.go.jp,ishizuka@mel.go.jp

 

 


 

MGC超高効率タービンシステム技術の先導研究

基礎技術部 材料物性研究室 平野 一美
TEL:0298−61−7066

機械研NEWS 2000 No.2より

[概要はこちら]

機械研NEWS,2000,No.2 PDF file(442kb)

 

1.はじめに 

 MGC材料(Melt Growth Composite:融液成長複合材料)と名付けられた夢の超耐熱材料が出現した(1). 鋳造可能な単結晶酸化物系セラミックスのIn−Situ共晶複合材料であり,Al2O3/Y3Al5O122O3/GdAlO3(GAP)及びAl2O3/Er3Al5O12(EAG)等がその代表例として挙げられる.相界面の整合性も良くアモルファス相の生成,析出物や欠陥等が極めて少ない三次元ネットワーク構造を有している.融点直下まで室温強度を保持する革新的な超高温強度特性を有しており,超高温において転位による塑性変形能を示すが,極めて高い降伏応力や強度レベルを維持する.また,鋳造速度をコントロールして組織を微細化しても耐クリープ性に優れ,超塑性現象も発現しない.さらに,大気中,超高 温/長時間(1700℃/1000hr)暴露後も組織成長や酸化重量の増減がほとんどなく,優れた耐酸化性を示す.このような耐熱材料としてのポテンシャルに加えて,鋳造が可能なことからニアネットシェイプ成形等による大型複雑構造要素への適用性も考えられるなど,従来の焼結セラミックス材料と比較して複雑形状付与性や寸法安定性等に優れる特徴を有している.ただし,酸化物系セラミックスの宿命として破壊靭性,耐熱衝撃性が小さいので,高靭性化や耐熱衝撃性を改善する材料設計やプロセス技術開発が今後のMGC材料の実用化/商用化の鍵を握っている.

 一方,地球環境問題の解決を図り,タービンシステムのなお一層の高性能化,省エネ化を達成するための主要な技術課題の一つは運転温度の高温化であり,超高温材料とその構造要素適用化プロセス技術開発の成否にかかっている.

 かかる観点から,平成10年度から通商産業省工業技術院NSS計画の先導研究として,MGC材料を適用する超高効率タービンシステム技術の研究開発が開始された.本先導研究は(1)MGC材料の高性能化技術及び製造プロセス技術(2)高温特性発現メカニズムの解明および(3)システム統合化研究からなり,MGC材料を適用したタービンシステム技術の確立に向けた技術開発課題の抽出ならびにその解決アプローチ等の検討により,(4)MGC材料の特性を最も活かしうる超高効率タービンシステム開発計画の企画・立案を目指している.

 基礎技術部材料物性研究室では先導研究をリードするとともに,破壊メカニズムの解明を通したMGC材料の高性能化や今後のMGC材料適用化プロセス技術開発に欠かせない模擬実環境材料試験評価技術/試験装置の研究開発を進めている.ここでは,MGC材料の破壊靭性と疲労き裂進展抵抗に及ぽす結晶成長方位の影響(2−6)と模擬実環境材料試験評価装置の開発・整備状況ならびに今後の研究展望について報告する.

 

2.材料及び試験方法

2.1 供試材  実験に供した材料はIn−Situ単結晶酸化物系セラミックス共晶複合材料Al2O3/Y3Al5O122O3/Y2O3=67/33wt%であり,Mo坩堝を用い,温度1900℃,坩堝下降速度を5mm/hとするブリッジマン法により製造した.素材の形状寸法はΦ40×70Lである.三次元ネットワーク構造を有する単結晶同士のIn−Situ共晶複合材料である.図1に材料の微視組織レーザー顕微鏡写真を示す.

H12-2MGC-1s.jpg

 

2.2 試験方法

 破壊靭性試験はIF法により行った.各単結晶相の破壊靭性を評価するため,試験条件は押し込み荷重75gf,保持時間10秒とした.破壊靭性KICは次式を用いて評価される.

 KIC=0.011E0.40.6-0.7(l/a)-0.5

ここで,E:ヤング率 2l:き裂長さ P:押し込み荷重 2a:圧痕径である.

 繰返し疲労き裂進展試験は室温大気中にて,クローズドループ方式の電気油圧式材料試験機を用い荷重振幅を一定とする△K漸増試験にて行った.応力比を一定(R=0.1)とし,繰返し速度f=1〜20Hzにて行った.試験後,SEMやレーザー顕微鏡等を用い破面のフラクトグラフイ的観察を行った.

 

3.破壊靭性の変動及び採取方位依存性

 図2(a)〜(c)にC面におけるYAG相,Al2O3相およびYAG/Al2O3界面におけるビッカース圧痕による典型的なき裂進展の様相を示す.

 YAG相ではき裂は進展し易く,ラテラルクラックが比較的発生しやすい.Al2O3相ではYAG相と比較してき裂進展が小さく,界面付近ではき裂が界面沿って進展していく傾向が認められる.

H12-2MGC-2s.jpg

 

 各採取方位における破壊靭性試験の結果によれば,破壊靭性はYAG相が最も小さく界面およびAl2O3相の順となる.A面の破壊靭性の平均値(サンプル数50)は2.11MPa√m,B面は2.17MPa√mおよびC面は2.45MPa√mとなり,破壊靭性に採取方位依存性が認められる.最も破壊靭性の小さいA面は一方向凝固方向と垂直な面であり,圧子押し込みにより発生するパルムクビストクラックが凝固方向と平行となる.破壊靭性が変動する主たる原因として,YAG相およびAl2O3相の破壊靭性レベルの相違が挙げられ,YAG相の破壊靭性がAl2O3相のそれより小さい.

 破壊靭性の二母数ワイブル分布を図3に示す.いずれの採取方位においても破壊靭性が最も小さいYAG相支配,中間の界面特性支配及び破壊靭性が最も大きいAl2O3相支配の混合型ワイブル分布特性を示す.破壊靭性の平均値が一番小さいA面の形状母数が最も大きい値を示し,破壊靭性の変動が一番小さい.一方向凝固方向と垂直なB,C面で破壊靭性の平均値および変動幅とも大きい結果となった.三母数ワイブル分布によれば,各方位の位置母数はそれぞれの方位におけるYAG相の破壊靭性の最小値と良い対応関係を示した(5)

H12-2MGC-3s.jpg

 

 

4.疲労き裂進展抵抗

 疲労き裂進展曲線を図4に示す.R−L方位,すなわち,き裂が凝固方向と平行に進展する場合,比較的スムースなき裂進展曲線を示すのに対して,L−C方位,すなわち,き裂進展が凝固方向と垂直な場合,き裂は相界面に達すると一旦停留したり界面に沿って進展した後,疲労損傷の蓄積ないしは荷重振幅の増大により再進展を繰返す,顕著な不運続疲労き裂進展挙動を示す.

H12-2MGC-4s.jpg

 

 疲労き裂進展速度da/dNと最大応力拡大係数Kmaxとの関係を図5に示す.比較的スムースなき裂進展挙動を示したR−L方位について,バラツキはあるもののda/dNとKmaxの間には一義的関係が成立し,da/dN=C Kmaxmのべき乗則で表示できる.焼結多結晶アルミナセラミックスと比較すると,da/dN−Kmax曲線の傾きは小さいが,疲労き裂進展の下限界値Kmax,thはおおよそ1.5MPa√mとアルミナセラミックスの1.9MPa√mと比較して小さな値を示しており(△K漸増試験であり,Kmax,thの決定には多少問題があるが),疲労き裂進展抵抗は同等かそれ以下と判断される.

H12-2MGC-5s.jpg

 

 一方,顕著な不連続き裂進展挙動を示した,一方向凝固方向と垂直なL−C方位について,da/dNとKmaxの間に一義的な対応関係が成立するか否かについて詳細な検討が必要であるが,同一Kmaxに対するき裂進展速度はいずれも1オーダー以上小さな値を示しており,疲労き裂進展抵抗は焼結多結晶セラミックスのそれと比較して優れていると判断される.

 疲労破面のフラクトグラフイ的観察結果によれば,安定な疲労き裂進展領域および急速破壊領域とも粒内へき開状破壊が支配的であり,両者にほとんど破壊メカニズムの相違は認められない.一方,焼結セラミックスの疲労破壊メカニズムは粒界破壊が支配的であることが知られており,一方向凝固単結晶Al2O3/YAG系共晶複合材料と焼結多結晶Al2O3セラミックスの疲労破壊メカニズムには大きな差異がある.

 

5.模擬実環境材料試験評価装置の開発・整備

 MGC材料性能からみた1700℃級無冷却方式タービンシステム実現の可能性を評価するための模擬実環境材料試験評価装置の開発・整備を進めている.図6に模式的に示すように,Slow Strain Rate試験装置をベースに超高温・高圧水蒸気を発生する環境シミュレータを付属した装置構成となっている.本試験装置によりタービン燃焼環境等を模擬した超高温・高圧水蒸気中の過酷環境下においてMGC材料の疲労やクリープなどの長期耐久性の評価試験が可能である.今後,1700℃級無冷却方式タービンシステムのコンボーネント材料としてのMGC材料の模擬実環境性能評価に関連して,疲労,クリープ,エロージョン・コロージョンおよびFOD特性等の評価研究を実施する計画である.

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6.今後の展望

 ガスタービンシステムの更なる効率向上のためにはタービン入口温度向上と冷却空気の削減を同時に可能とする新たな超耐熱材料の適用が必要不可欠である.MGC材料を適用すれば,1700℃級無冷却方式のタービンシステムも可能となる.図7に一例を示すように,1700℃級無冷却方式タービンシステムの総合熱効率についてのフイージビリティによれば,15%以上の大幅な熱効率向上が見込まれる(7).現在,新たに有望な3元系のMGC材料Al2O3/YAG/ZrO2やAl2O3/EAG/ZrO2等の探索や創製プロセスに成功し,MGC材料の大型・複雑形状付与技術の開発可能性についても明らかにされるなど注目すべき先導研究成果が報告されている〈8).今後,本格的な国家プロジェクトに向けて研究開発ターゲットの絞込み等研究開発計画の立案が期待されている.

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謝 辞

 最本研究は通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画「MGC超高効率タービンシステム技術先導研究開発」の一環として行ったものであり,新エネルギー・産業技術総合開発機構の燃料・貯蔵技術開発室及び先導研究委員会(ガスタービン実用性能向上技術研究組合内設置)の関係各位ならびにMGC材料を提供して頂いた(株)超高温材料研究所の和久芳春プロジェクト部長に感謝する.

 

「参考文献」

1)Waku, Y., N.Nakagawa,T.Wakamoto,H.Ohtsubo,K.Shimizu and Y.Kohtoku;A Ductile Ceramic Eutectic Composite with High Strength at 1873K, Nature, 389-6646, (1997), pp.49-52

2) Hirano, K.; Fracture Toughness and Fatigue Crack Growth Resistance for In-situ Single Crystal Ceramics Eutectic Composites, American Ceramic Society 101st Annual Meeting & Exposition, (1999-4)

3) Hirano, K.; Future Prospects of R&D on Ultra-high Temperature structural Materials (Keynote), Proc. of 7th International Fatigue Congress -Fatigue' 99, Vol.4, (1999-6), pp.2119-2126

4) Hirano, K., T. Suzuki, A. Kamei and F. Tamai; R&D on In-situ Single Crystal Oxides Ceramics Eutectic Composite, Proc. of 7th Euro-Japanese Symposium on Composite Materials and Transportation_ (1999-7)pp.13-18

5)平野,亀井,鈴木;日本機械学会材料力学部門講演会講演論文集,No.99−16,(1999−10),pp.183−4

6)平野,玉井,鈴木;同上講演論文集,No.99−16,(1999−10),pp.185−6

7)平成10年度「MGC超高効率タービンシステム技術先導研究開発」成果報告書,平成11年3月

8)和久ら;未発表

 


 

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