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平成12年6月20日
通商産業省 工業技術院
機械技術研究所

  マイクロ旋盤のNC化に成功
World-smallest numerically controlled machine tool (micro-lathe)

通商産業省 工業技術院 機械技術研究所は,1996年に開発した「世界最小のマイクロ旋盤」の特徴である「従来にない全く新しい駆動機構」に数値制御駆動(NC化)を導入することに成功し,その切削評価実験においてNC制御ならではの定寸加工による加工図面数値の形状創成と,より滑らかな駆動加速度制御で加工面粗さの大幅な改善を立証した.



      <キーポイント>

1.直線スライド位置検出機能の組み込み
     マイクロリニアエンコーダの組み込み
     (超小型の面発光レーザを用いた非接触スケール)

2.精度高いなめらかな微少スライド法(特許出願中)を開発
     変位指令信号とエンコーダ信号のサーボ偏差から5ms
     ごとに±符号と圧電アクチュエータの駆動電圧を与える。
     上記制御系をシングルコンピュータで実現。

3.NC加工の評価(運動制御、加工精度)
     スライド機構    max 400μm/s
     位置決め分解能   ±  0.2μm
     母線方向最大粗さ  Ry  約0.5μm
     経線方向最大粗さ  Ry  0.8μm
     真円度           0.5μm

マイクロファクトリ関連の発表
   平成12年04月10日   ポータブルマイクロファクトリ
   平成11年10月06日   世界初!デスクトップタイプの機械加工マイクロファクトリ
   平成10年12月01日   世界初の「マイクロファクトリ国際ワークショップ」の開催
   平成08年08月07日   世界最小のマイクロ旋盤の開発に成功

マイクロ旋盤のNC化

図1 マイクロ旋盤の外観 図2 数値制御システムの全景
   
   
   
図3 加工された微小ニードル(真鍮)
直径 0.056mm
図4 NC加工されたマイクロハット
つば 直径 1.8mm
半球 半径 0.5mm
 

1.概要

 通商産業省 工業技術院 機械技術研究所は,世界最小の工作機械であるマイクロ旋盤の数値制御化(NC化)に成功した.

 1996年に機械技術研究所によって開発されたマイクロ旋盤は,手のひらサイズの工作機械で,圧電アクチュエータを使ってスライド機構を移動させ,微小な旋削加工ができるものであった.その後,地域コンソーシアム研究開発制度「工作機械のダウンサイジング化基盤技術に関する研究(H9〜11)」において,加工精度を左右する各種特性因子や直動機構の運動制御法等に係わる特性など従来にない駆動機構を有するマイクロ旋盤の実用化に向けたNC化の研究を実施してきた.

 今回の開発の主眼は,圧電アクチュエータの駆動方法を改良し,より滑らかな制御を可能にすると同時に,スライド機構の変位を検出するマイクロリニアエンコーダを装着し,運動制御が通常の工作機械のように数値制御で行えるようになったことである.

 切削加工実験において,NC制御ならではの形状創成,定寸加工が得られ,より滑らかな制御で加工面粗さも精度が数段改善されることが確認された.

 

2.開発の背景

 現在,小さい部品の加工は普通サイズの工作機械で加工されている.これらの工作機械を小型化することは,それ自体の購入価格,運転コスト,空調エネルギなどの低減や,スペースファクターや生産ラインの再配置性の向上に寄与し,これからの製造業に重要なメリットを提供する.機械技術研究所が提唱している「機械加工マイクロファクトリー」は,新しい技術の導入を道具に,生産システムを高度に小型・集積化しようとするものである.1996年に開発されたマイクロ旋盤は,そのマイクロファクトリーの構成要素の一つであった.

 しかし,当時のマイクロ旋盤は,世界に類のない駆動機構を備えて超小型化を可能にした旋盤であったが軸移動機能しか備えていなかったため,単純な形状以上のものを加工できなかった.また,表面粗さも改善の余地があり,精密な加工寸法を規定できなかった.今回の開発は,初期のマイクロ旋盤がもっていたこれらの欠点を克服し,数値制御工作機械としての機能を備えさせ,その性能を評価することが目的であった.

 

3.今回の開発の内容

 開発の主眼は,オリジナルのマイクロ旋盤の設計を引き継いだ,圧電アクチュエータを内蔵した直動微小スライダ機構の駆動方法を改良し,新たに開発された変位検出用のマイクロエンコーダと組み合わせて完全閉ループ制御を行うことによって精密な運動制御を可能にしたこと,およびコンパクトなカスタムNC装置を装着し,通常の工作機械と同様の精密な数値制御を可能にしたことである.その他の機械の諸元はオリジナルの設計を踏襲し,主軸は定格1.2WのDCコアレスモータで間接駆動され,最高回転数は15,000rpmである.

      3.1 マイクロリニアエンコーダ

       採用したマイクロリニアエンコーダは,オリンパス光学工業株式会社が新たに開発した超小型の面発光レーザを用いた非接触スケールである.ヘッドの寸法は4.5×5.5×2mmと超小型で,25μmの元信号ピッチに信号レベル変換を介して400倍の内挿器を接続し,位置検出分解能62.5nmを得ている.

      3.2 フル・クローズド・ループ・サーボ系

       変位指令信号とエンコーダからのパルス信号をカウンタで受け,サーボ偏差から速度指令値を得る.この速度指令値の符号と大きさに基づき1制御周期分の各圧電アクチュエータへの駆動波形を発生させる.これを高圧増幅器へ入力し,圧電アクチュエータの駆動電圧を得る.この動作を制御周期は5msごとに行う.これによって指令パルスに追従した滑らかで精密な運動制御が可能になった.サーボ系はシングルボードコンピュータによって実現されている.(特許出願中)

      3.3 カスタムNC

       マイコン応用NCボード(株式会社テクノ製)を用いたカスタムNCを製作した.操作パネルのほかにプログラム管理用およびモニタ用のノートブックパソコンを備える.システム全体の占有卓面積は450×500mm程度である.制御分解能は0.1μmである.

 

4.評価

      4.1 運動制御

       スライド機構の最大速度400μm/s,位置決め分解能±0.2μm,小振幅応答帯域20Hz等の特性を得た.スライド機構自体の位置決め分解能は0.05μm以下であるが,エンコーダの分解能と安定性重視の制約から,システムの位置決め分解能が設定されている.

      4.2 加工

       円筒面旋削の加工面粗さを触針粗さ計で評価した結果,母線方向および経線方向のそれぞれの最大粗さ(Ry)約0.5μm,0.8μmという値を得た.これらは,真円度0.5μmとともに,精密旋盤のそれに匹敵する.

       真鍮の被削材に対し,マニュアルで直径50μm,長さ600μmの微小ニードルの加工ができた.アスペクト比を小さくすれば直径30μmのニードルも加工ができた.

       NCプログラミングによる形状創成では,通常のNC旋盤と同様の加工が実現できた.

 

5.まとめ

 数値指令による精密な運動制御を可能にするために,マイクロエンコーダを内蔵し,フルクローズドループ変位制御を行うNC化されたマイクロ旋盤を完成させた.このマイクロ旋盤は,精密切削加工に使用しうる基本特性を備えていることが確認された.

 

6.関連行事

    第43回機械技術研究所研究講演会
    激動期の「ものづくり」における技術開発の方向を探る
        日 時 : 平成12年 6月21日(水)10:00−16:20
    場 所 : 三会堂ビル 石垣記念ホ−ル
    〒107-0052 東京都港区赤坂1−9−13 TEL03-3582-7451
    主 催 : 通商産業省工業技術院機械技術研究所 (財)日本産業技術振興協会

    上記講演会において
      「機械加工マイクロファクトリ」でマイクロ旋盤についても述べられる。

 

7.発表者

    生産システム部 生産機械研究室  岡崎 祐一
      TEL 0298-61-7224
      FAX 0298-61-7201
      E-mail : oka@mel.go.jp

 

8.問い合わせ先

    機械技術研究所 統括研究調査官  千阪 文武
      TEL 0298-61-7049
      FAX 0298-61-7033
      E-mail : chisaka@mel.go.jp


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