平成12年1月28日
通商産業省 工業技術院
機械技術研究所
ミニデモ99「自動運転車両による協調走行と車々間走行データ伝達の基礎実験」
実施日 :平成12年1月28日
実施場所:工業技術院 筑波第2研究センター 自動車試験道路(1周約3.2km)
<概要>
機械技術研究所は,1960年代からの自動運転システムの研究を背景に,現在,道路交通の安全だけでなく効率を目的として,通商産業省 工業技術院の特別研究で「省エネルギーのためのITS技術(平成9年4月〜)」を行っています.この研究では,自動車を群として扱いその走行を制御することによって自動車交通の省エネルギー化を計るものです.このため,複数台の運転車両に協調走行システムを搭載し,雁の渡りのフォーメーションのような柔軟な協調走行を行わせる研究を行っています.今回の実験は,ミニデモ99と名付け,1980年代初めから車車両間通信の研究を行っている(財)自動車走行電子技術協会(自走協)と共同実験プロジェクトチームを形成し、2000年の応用実験に向けて詳細な検討を行ってきた共同研究の中間報告です.このミニデモ99では,当所の「協調走行システムを搭載した車両2台による協調走行」と自走協の「3台の車両の間での車車間通信と通信結果の車室内ディスプレイ表示」をデモしました.この研究成果は,2000年12月に同じく自走協と共催でデモ2000の一環として公開する計画です.
先行車をとらえつつ自動で車線変更の協調走行(直線)
先行車をとらえつつ自動で車線変更の協調走行(バンク)
車内のディスプレイ
<デモ内容>
当所の協調走行を行う車両には,ラテラル制御(横方向の操舵制御)とロンジチュージナル制御(縦方向の速度・車間距離制御)の両方の機能があります.横方向の操舵制御では,マシンビジョン(CCDカメラとコンピュータによる視覚)によるレーンマーカの検出,DGPS(衛星通信位置検出システム)を用いた自車位置のリアルタイム計測,精密な道路地図(今回はテストコース)に基づいて操舵を行っています.縦方向の速度・車間距離制御では,レーザレーダ,車車間通信結果による近傍の車両の位置データの送受,先行車の後部に装着した光マーカの後続車のCCDカメラによる検出などによって,車群内における自車位置を確認し,速度や車間距離を制御します.
今回のミニデモ99では,先行車を自動運転で走行させ,後続車を先行車とぼ同じ軌跡を辿って自動走行させました.
自走協の車車間通信では,5.8GHz(ギガヘルツ)のDSRC(狭域短距離通信)を用いて車群内で車車間通信ネットワークを構成し,車両の制御に必要な,各車の位置,速度,加減速度などを通信周期20ms(1/1000秒)で各車間で送受するものです.今回の実験では,データの送受をデモしました.
車車間通信では高速でデータが送受され,しかも直接に車両の制御に使用されるため,ドライバや同乗者にはデータの内容は伝えられません.ドライバや同乗者に通信結果を示すために,他車の位置や移動方向,速度を車室内のディスプレイに表示するシステムを作成しています.今回は,模擬的なデータを用いてディスプレー表示をデモしました.
2000年12月に計画しているデモ2000では,5台の自動運転車両を用い,これらの車両間で車車間通信ネットワークを張り,プラトゥーニング走行(車群走行),障害物の検出と2車線から1車線への合流などの柔軟な協調走行をデモする予定です.
[連絡・お問い合わせ先]
機械技術研究所 物理情報部 知識工学研究室
津川定之 E-mail: tsugawa@mel.go.jp
Tel: 0298-61-7056
加藤 晋 E-mail: shin@mel.go.jp
Tel: 0298-61-7127
統括研究調査官室
千阪文武 E-mail: chisaka@mel.go.jp
石塚一則 E-mail: ishizuka@mel.go.jp
Tel: 0298-61-7049、Fax: 0298-61-7033
東京都港区虎ノ門1−25−5 虎ノ門34森ビル9階
(財)自動車走行電子技術協会 研究部
国弘 由比 (Yui Kunihiro)
E-mail: yui-san@jsk.or.jp
Tel: 03-3501-5676
<機械技術研究所オリジナルの研究>
複数台の自動運転車両を小さな車間距離で列車のように走行させるプラトゥーニングは,すでに米国や我が国で研究や実験がされています.
当所の協調走行は,これらの列車のように1レーンでのプラトゥーニングとは異なって,たとえば雁の渡りのフォーメーションのような,複数車線にまたがって柔軟なプラトゥーニングを行う点に特徴があります.この目的は,道路交通の安全だけではなく,道路の実効容量を増加させて渋滞の発生を抑制し,さらにはドライバに快適な運転環境を提供することにあります.柔軟な協調走行によって,合流や車線変更をスムーズに行うことが可能となり,道路容量が増加し渋滞の発生が抑制されて,省エネルギー,環境負荷低減にも有効となります.当所では,そのための,道路や周辺車両のセンシング技術や,ハンドル,アクセル,ブレーキの車両制御に関する研究を行っています.
[参考文献]
(1).加藤, 津川, 「プラトゥーニングのための蛇角・速度制御アルゴリズム」, 第17回日本ロボット学会学術講演会論文集, 1999/9/9-11
(2).加藤, 津川, 「ビジョンに基づく車線逸脱の検出・警告と自動運転への移行」, 日本機械学会第9回インテリジェント・システム・シンポジューム講演論文集, 1999/11/27-28,福井
(3).津川, 森, 加藤, 「視野内の移動目標点を用いた車両のラテラル制御」, 日本機械学会第9回インテリジェント・システム・シンポジューム講演論文集, 1999/11/27-28,福井
協調走行用の実験車両(それぞれにDGPS、レーザレーダ、マシンビジョンなどの機能を持つ)
車内のディスプレイ
計測制御機器はトランクの中に収納
システムのコンパクト化は今後の問題
2台の車両による追従走行の自動運転
先行車の走行
DGPSと地図上の目標点列による操舵とマシンビジョンによる操舵
DGPSと地図上で設定した目標速度によるスロットル制御とブレーキ制御
後続車の走行
マシンビジョンを用いた先行車検出による同轍制御
速度制御はマニュアル
プラトゥーニング(1) 直線路での追従と車線変更
プラトゥーニング(2) 曲線路での追従と車線変更
<道路交通の全領域におよぶハイテク化>
最近よく話題に挙がるITS(Intelligent Transport Systems)は、日本では「高度道路交通システム」と呼ばれており、20世紀後半に大きな進歩を遂げたコンピューターや通信分野の先端技術を駆使し、産業や生活の基盤である「交通」をハイテク化しようというものである。
ハードとソフトの融合技術により交通問題の解決をめざすITS的発想は、1940年頃、アメリカにすでに登場していた。大学や企業で個別に行われていた研究が1980年代半ばから統合されて大規模プロジェクトとして展開されるようになった。この動きは1990年代に入ってさらに加速され、現在では各先進国において、それぞれ官民を挙げたプロジェクトが推進されている。
ITSの具体的内容は、広い範囲にわたっており、アメリカで連邦運輪省の諮問機関として1990年結成されたIVHS(Intelligent Vehicle Highway Society, 現・ITS)に端を発したもので7つの分野を挙げている(表1)。
日本では、警察庁・通商産業省・運輸省・郵政省・建設省の5省庁を中心に推進されているプロジェクトにおいて、1996年、「ITSの9分野と20テーマ」が策定されている(表2)。また、最近では、21番目の課題として「高度情報通信社会関連情報の利用」が道路と社会情報の関わりにおいて注目されている。
表1.ITSの各分野とその代表事例
| ATMS:高度交通管理システム | 交通信号制御、自動車料金収受etc. |
| ATIS:高度旅客案内システム | ナビゲーションシステム、経路誘導システムetc. |
| AVCSS:高度車両制御および安全システム | 運転支援システム、自動運転システムetc. |
| CVO :商業車両運行 | 商業車両群管理etc. |
| APTS:高度公共輸送システム | 公共交通システムの情報化etc. |
| ARTS:高度都市圏外輸送システム | 天候・路面状況情報提供、メイデイシステムtc. |
| AHS :自動化ハイウェイシステム | 自動運転システム |
表2.ITSの9分野と20テーマ
| 1.ナビゲーションシステムの高度化 |
(1)交通関連情報の提供 |
| (2)目的地情報の提供 |
| 2.自動料金収受システム |
(3)自動料金収受 |
| 3.安全運転の支援 |
(4)走行環境情報の提供 |
| (5)危険警告 |
| (6)運転補助 |
| (7)自動運転 |
| 4.交通管理の最適化 |
(8)交通流の最適化 |
| (9)交通事故時の交通規制情報の提供 |
| 5.道路管理の効率化 |
(10)維持管理業務の効率化 |
| (11)特殊車両等の管理 |
| (12)通行規制情報の提供 |
| 6.公共交通の支援 |
(13)公共交通利用情報の提供 |
| (14)公共交通の運行・運行管理支援 |
| 7.商用車の効率化 |
(15)商用車の運行管理支援 |
| (16)商用車の連続自動運転 |
| 8.歩行者等の支援 |
(17)経路案内 |
| (18)危険防止 |
| 9.緊急車両の運行支援 |
(19)緊急時自動通報 |
| (20)緊急車両経路誘導・救援活動支援 |
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