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平成11年6月2日(水)
超微粒子高速堆積法で電子機能セラミックスの低温厚膜化に成功
通商産業省 工業技術院 機械技術研究所
「発表の概要」
機械技術研究所は、微粒子を高速で衝突させる成膜法(ガスデポジション法)により、高速・高精細インクジェットプリンター等に応用可能な高速な厚膜形成技術の開発に成功した。
今回、開発した方法は1981年に始まった「林超微粒子プロジェクト(リーダー:林 主税)」で研究されたガスデポジション成膜法を、実用化に向けてさらに発展させたもので、高速・高精細のインクジェットプリンター等へ応用可能なことを確認した。
これまでの機能性薄膜の製作研究は、原子、分子レベルからのビルドアップによる成膜法が主であったが、今回の厚膜形成方法は、機械的な粉砕等で作られ表面が酸化していたり、不純物が付着しているような表面活性が低い状態の微粒子を用いて高速成膜を可能にする画期的なものである。
この新しい方法を使って圧電機能を有する厚膜を作成した。電子セラミックス微粒子を、室温から100℃程度、133〜1330Pa(1〜10Torr)といった比較的低真空の雰囲気で堆積させ、”数μm以上の厚膜としては、世界で最高の変位特性”が得られる圧電膜を作成した。実用化の最大の決め手は成膜速度と電気機械性能と言えるが、当所の成膜速度は毎分8μmであった。これは、スパッタリング等の従来技術の”約30倍”(薄膜技術:1cm×1cm面で約0.1〜0.3μm/min)で驚異的な高速な成膜化を可能にしたものである。ステンレス薄板に厚さ10μm以上のPZTを堆積させ、比較的低温の熱処理を行うことで、厚膜アクチュエーターとして世界最高性能の電気機械特性を示すことを確認した。アクチュエーター性能は、圧電定数d31が、100〜140pC/Nで、市販品に十分匹敵し、密度が高いため耐電圧が最大で1MV/cmと従来値を大幅に上回った。
「研究開発の内容・経緯」
当所では、特別研究「超微粒子堆積技術を用いたラピッドプロダクションに関する研究(平成8年4月 〜 平成13年3月)」において、「 超微粒子の気相堆積法や液相状態の超微粒子を利用したゾルゲル法などを発展させ、これまでの成膜技術では困難であった機能性材料の高速厚膜形成をおこない、マイクロマシン等のようなアクチュエーション・センシング機能を併せ持つ3次元微小構造体の新しい創出技術を確立する」研究を実施している。
マイクロマシンなどでは、微小部品を積み重ねた(高集積微小)機械の開発普及が問題となっており、状況を検出するセンサや駆動部(アクチュエータ)を薄膜で効率良く製造する技術が不可欠である。これまでこのような薄膜の製造技術として、ゾルゲル法、スパッタリング法、レーザアブレージョン法、化学蒸着法などの適用が、すでに10年近く研究開発されてきている。しかし、短時間で必要な厚さを形成する大量生産に適した「薄膜マイクロ・アクチュエータ製造技術」は確立していなかった。
今回開発した技術は、1981年に始まったERATOの「林超微粒子プロジェクト(リーダー:林 主税)」で研究されたガスデポジション法を利用、発展させたものである。当所は大量生産への適応を念頭に置き、比較的表面活性が低い機械的粉砕法等で作成された微粒子を使用、これを高速で堆積させて必要な変位量・強度が得られる成膜法を開発した。これは、微粒子の高速衝突による付着現象を用いた成膜法であり、電圧を掛けると延び縮みする圧電セラミックス材料(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)を、低温で、従来は困難であった厚さ10μm以上にまで堆積するものである。本手法では、成膜時において特定成分の熱的分解がないため微粒子の有する組成が成膜後も維持され、衝突時の極表面の低温接合等で優れた機械特性が得られており、最適な熱処理条件により結晶子サイズの制御も可能である。
これにより、成膜速度:8μm/minで厚さ1〜100μm以上のPZT厚膜を形成し、これに600℃〜700℃程度の熱処理を行うことで、圧電定数d31が100〜140pC/N(市販の1250℃焼結のバルク材:130〜200pC/N、スパッタリング等の薄膜技術:80〜110pC/N)、耐電圧は最大1MV/cm(バルク材:50〜100kV/cm、スクリーン印刷法で〜50kV/cm)、膜密度は理論値の95%以上を得て、実用可能な電気機械特性を持つことを確認した。また、簡単なマスクを用いることで煩雑なエッチング工程を用いることなく、線幅50μm、アスペクト比0.5程度のパターンニングにも成功した。この厚みと電気機械特性、パターン精度は、薄膜アクチュエータとして十分に実用化できるものである。
「応用分野と今後の課題」
この成功により、今後、次世代の高速・高精細のインクジェットプリンターや高密度ハードディスク装置の磁気ヘッドアライメントに用いられるフラッパー型アクチュエータなどへの応用が期待され、さらには、高度な医療用マイクロポンプや携帯型化学分析機器の性能向上を可能にするものとして期待できる。
しかしながら、さらなる応用展開を考えると、プラスティック基板などへの直接成膜も重要で、より室温に近いプロセス温度で十分な電気機械特性を得ることが今後の大きな課題と言える。
一方、本研究開発を通して、成膜メカニズムが、以前に検討された金属超微粒子の場合とは異なることを見つけた。現在、膜の微細構造の検討や粒子速度の精密な測定を通して、成膜メカニズムに関する新しい仮説を支持する有力な実験結果を得ている。この様な知見から、今後は成膜温度のさらなる低温化を検討していく。
現在は、外部機関との協力により他の材料への検討も開始しており、光触媒である酸化チタンや透明電極のITO膜(インジューム・錫酸化)、移動体通信機器や薄膜トランスに不可欠な高周波フェライト材料、電池用電極材料などへの応用を検討中である。
「関連文献」
明渡 純,”超微粒子ビームによる成膜法と微細加工への展開”,応用物理,Vol.68,No.1,1999
「英文概要(Abstract)」
「Rapid-production of intelligent micro parts made from Ultra fine particles 」
There is a trend for micro oriented tendency in mechanical engineering. Several technology, e.g. LIGA, Stereo-lithography and MIM, are proposed as powerful tools. However conventional thin film process such as sputtering, sol-gel method etc, thickness of the film is limited in a few microns. MEL is going to develop the technology to form 3-dimensional micro structure by using gas-deposition and sol-gel based new process in this R&D. There are several outstanding features in these methods : fast deposition rate, low process temperature and easy patterning capability. This study will improve widely the function of micro-actuator and sensor. And then new nucleus of industrial technology will be coming out in the field of micro-machine technology and robotics engineering.
「発表者」
発表者氏名:明渡 純
所属:工業技術院 機械技術研究所
生産システム部 生産機械研究室 主任研究官
電話:0298-61-7228 FAX:0298-61-7201
E-mail:akedo@mel.go.jp
問い合わせ先 機械技術研究所 統括研究調査官室
千阪文武/石塚一則
TEL 0298-61-7034
FAX 0298-61-7033
E-mail:chisaka@mel.go.jp



