平成11年10月22日
手術用MRI内で使う磁気フリー手術支援ロボットの動作試験に成功
概 要
通商産業省 工業技術院 機械技術研究所と米国ハーバード医学校ブリガム & ウィメンズ病院(BWH,米国ボストン)の Surgical Planning Lab (SPL) およびジョンズホプキンス大学(米国バルチモア)Computer Integrated Surgery Lab (CISL) は,国際特定研究制度(注1)において渡米し共同研究を行って、今年(1999年)8月に手術用MRI(磁気共鳴画像)装置内で使用可能な世界で初めての磁気フリーロボット/マニピュレータシステムの動作試験に成功した.
今年8月(1999年)「工業技術院 医療福祉機器研究開制度、重要技術の競争的研究開発制度(注2)」でこれまで実施してきた研究の一環として,試作したロボットとともに設計者の鎮西清行 主任研究官(基礎技術部バイオメカニクス研究室)が渡米し,共同研究を行っている現地BWHで手術用MRI装置にこのロボットを組み込み前立腺がんの放射線治療の支援を想定した動作試験を実施した.この結果,手術用MRI装置内に組み込んだロボット/マニピュレータシステムは診断用のMRI画像に影響を与えず,またMRIからの影響も受けないで「治療用の小さな放射線源を患部に挿入することを想定した動作試験」に世界で初めて(注3)成功した.
(注1)
工業技術院の国際特定研究制度で平成9年度より実施してきた.
米国側研究機関では,NSF Engineering Research Laboratory "Computer Integrated Surgical Systems and Technology"#9731748 (1998-2002年予定) などにより実施.
(注2)
工業技術院の産業科学技術研究開発制度(医療福祉機器研究開発),重要技術の競争的研究開発制度等で平成7年度より実施してきた.
(注3)
手術支援用のロボットは,これまでいろいろと開発されているがMRI装置内
のような強い磁気環境下で動作するものは開発が困難視されてきた.

ブリガム&ウィメンズ病院の手術用MRI装置に組み込んだ
機械研の手術支援ロボット/マニピュレータシステム
(磁場中でレーザーポインターや刺入針を操作します)
<解 説>
MRI装置
X線を使わない医療診断画像の取り込み装置としてMRI(磁気共鳴画像:Magnetic Resonance Imaging)装置が有ります.骨の他に柔らかい組織や病変組織の描画が可能です.
解決すべき課題
超電導の大きな磁石コイルから発せられる磁気傾斜が生体組成と共鳴する変化を画像化します.このため,磁石に反応する材料や画像情報に影響を与えるものはこの装置の近くに持ち込めません.
支援ロボットは何をするか
開発した手術ロボットは,2本の腕をXYZの3次元座標系で動作させ,最大でも2名の医者しか手術に立ち会えない空間に医者の4本の腕以外に2本,あるいは4本程度の腕を提供する.
医者の指示にもとづき人体内部の画像をモニターしながら手術ロボットの腕を必要な位置に移動させ,必要な患部の保持や液薬,治療部材を注入するなどの作業が期待できます.
動作試験内容<br> 今回は前立腺がんの放射線治療において,小さな放射線源をMR画像を見ながら目的の位置に挿入することを想定した動作試験を行いました。
生体は刺激を受けると変形するため手術前の3次元画像をもとに挿入すると後で位置のずれが確認される場合がありその修正が容易ではありませんでした.本システムではMR画像で位置を確認しながら目的の位置に挿入できます.
ブレークスルーは何か
磁気フリー手術支援ロボットである.手術ロボットの駆動システムは,モータ等全ての部材を磁気環境下での動作を考慮して設計試作したもので,材料の取捨選択,設計変更,駆動試験の繰り返しにより開発されたものです.今回試作したロボットシステムは,当所のNMR近傍で駆動試験を行いロボット駆動とNMR画像の干渉について十分検討した結果採用された要素で構成されています.単純な磁気フリー機構で目的とする機能を完備し,世の中にない全くのオリジナルな支援ロボットとなっています.
<キーワード>
MRI適合機械技術,お医者さんがほしがる孫の手,磁石に反応しないロボット
「発表者」
発表者氏名:鎮西 清行
所属:工業技術院 機械技術研究所
基礎技術部 バイオメカニクス研究室 主任研究官
電話:0298-61-7120 FAX:0298-61-7167
E-mail:chin@mel.go.jp
問い合わせ先 機械技術研究所 統括研究調査官室
千阪文武/石塚一則
TEL 0298-61-7049
FAX 0298-61-7033
E-mail:chisaka@mel.go.jp

うまく動作するだろうか!! 右腕、左腕、模擬ツール
(左右の腕でレーザーポインターや刺入針を操作します)

ハーバード大学での実験参加者
左(Oliver Schorr;独カールスルーエ大,博士課程)
,中央(筆者:鎮西清行),右(波多伸彦(工博);SPL)
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