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通商産業省 工業技術院
機械技術研究所
統括研究調査官室


高架橋道路に発生する
振動モードのクラスター化

機械研NEWS,2000,No.11より

機械研 NEWS text file

機械技術研究所 極限技術部 振動制御研究室
菊島 義弘



<概  要>

 高架橋道路の建設において,最近では耐震性を考慮して,重いコンクリ−トから柔軟性のある鉄骨構造への変更,鉄が主体のスライド型支持系から積層ゴムによる弾性支持方式への変更が採用されている.柔軟性の追求は耐震に効果があるものの,道路部自体が揺れやすくなり,車両渋滞時における運転者への不愉快振動を発生や,近隣住民への低周波騒音の影響が問題視されている.このような振動対策,特に低周波振動対策についてはいまだ有効な対策が講じられていないのが現状である.

 極限技術部 振動制御研究室では,このような高架橋道路の振動制御に「クラスター制御法」を適用することを目的として,高架橋道路を模擬した実験モデルを用い,二辺が自由−自由,二辺が複数の点接触(弾性支持)により支持されているリブ付き構造物(直線,扇状構造物)のクラスターセンシングを試みた.この結果,直線,扇状構造物の双方において,クラスターセンシングの特徴である目的外の振動モードをセンシングすることなく特定の振動モード群のみをセンシングすることが可能であった.



 

図1 高架橋道路モデル外観図

  • 二辺が自由−自由,二辺が複数の点接触支持のリブ付き高架橋道路モデル
     寸法:高架橋道路の1/20 (上下線が一体となった直線高架橋道路を想定)
  • 1.8m ×0.9m ×6mm の平板に20mm ×4mm のリブが6 本
  • リブ端が弾性体(硬質ゴム)で支持
  • 材質:平板,リブ共にアルミニウム
  •  

     

    図2 分類された振動モード形状(FEM 解析結果)

  • 振動解析:有限要素法を用いた振動モードの抽出
  • 励振時の振動モード形状をx軸(長手方向)およびy軸ごとに奇数/偶数に分類
  • リブ付き平板には200Hz の帯域内に16 個の振動モードが存在
  • 振動モードを4 種類に分類
     モード形状の4 隅:奇数/奇数(1,4,7,10,16st mode)4 隅の変位量が全て同相で,等振幅量
     モード形状の4 隅:偶数/偶数(5,11,13st mode)隣り合う隅は等振幅量,位相は逆相
     目的外の振動モードは全て検出しないセンシングが可能
     注)16 番目:偶数/偶数欄に入れているが奇数/奇数モード
  •  

     

    図3 クラスターセンシングされた振動モード周波数特性(実験値)

  • 加速度ピックアップ:リブ付き平板の4隅(x=18cm,162cm ,y=0cm ,90cm)
  • 外乱信号:動電型加振器(x =35cm ,y =0cm ) 200Hz までのランダム信号
  • 左上:奇数/奇数モード,右上:奇数/偶数
     左下:偶数/奇数,右下:偶数/偶数モード
     測定誤差による目的外の振動モードも若干確認
  • 目的とした振動モードだけをセンシング
  •  

     

    図4 扇状構造物の振動モード形状(FEM 解析結果)

  • 短辺(R1)=0.9m ,長辺(R2)=1.8m ,
     θ=45 度,板厚6mm の扇状平板に20mm ×4mm のリブが6 本
  • 1次の振動モード:中央が変形する形状
           自由−自由支持の長辺の振幅が大幅に変動
           短辺では殆ど変位が観測できないレベルまで振幅が低
  • 2次の振動モード:
           長辺と短辺の位相が逆転した形状で,長辺と短辺共に振幅が確認
  • 3次の振動モード:
           長辺に2つの振幅を持つ山と谷が確認
           短辺では山と谷が確認できない形状
  • R方向に対称性がないため,θ方向のクラスター化について検討
     長辺エッジ近傍対称位置に2個のセンサを設置
     その和,差:和で奇数次モードのセンサ出力が2倍,偶数次はキャンセル
           差で偶数次モードが2倍,奇数次はキャンセル
     2個のセンサの和,差で振動モードを奇数,偶数モードに分離,グループ化が可能    
  •  

     

    図5 クラスターセンシングされた振動モード周波数特性(実験値)

  • θ方向の対称位置(R=1.8m,θ=4.5度,41.5度)に2個の加速度センサを取り付け
  • センサ感度のばらつき,設置位置誤差による目的外の振動モードが若干確認
  • 目的とした振動モード(奇数モード5 個,偶数モード3 個)の和がセンシング
  • このクラスターセンシングで扇状構造物の振動モード群を分離可能
  • 相反性を利用したアクチュエータで目的とした振動モード群を安定に制御可能
  •     

     


    高架橋道路に発生する
    振動モードのクラスター化

    機械技術研究所 極限技術部 振動制御研究室 
    菊島 義弘
    TEL :0298 −61 −7146

     

    <概 要>

    機械研NEWS,2000,No.11より


     

    1 .はじめに

     自動車産業の発達と共に都市部の渋滞緩和,土地の有効活用を目的として昭和30年代後半から多くの高架橋道路が建設されている.その高架橋道路も阪神大震災以後,耐震基準の見直し等により軽量化,柔軟化が進められている.重いコンクリートから柔軟性のある鉄骨構造への変更,高架橋を支える支持部も鉄が主体のスライド型支持系から積層ゴムによる弾性支持方式を用いるようになってきている.柔軟性の追求は耐震の観点からすると効果があるものの,その結果,道路部自体が揺れやすくなり,渋滞車両の不愉快振動を発生させる基となっている.さらに,その振動は,近隣住民の低周波騒音公害の元凶にもなっているが,その振動対策,特に低周波振動対策についてはいまだ有効な対策が講じられていないのが現状である.

     高架橋道路を分類すると,両サイドを支柱に支えられた直線道路,カーブ道路,合流,流入道路等に分類でき,路線の大半が直線道路,カーブ道路となっている.それら道路部を車両が通行することで道路部が励振され,不愉快振動,低周波騒音が発生する.振動制御研究室では,これまでに平板構造物の振動を制御する手法として,クラスター制御法を提案1-5)し,矩形単純支持平板が固有に持つ振動モードのクラスター化の研究を進めてきた.当該法は,構造物が固有に持つ振動モードを同じ属性を有する振動モード群に分離・分割(クラスター化)し,各クラスターごとに抑制を行う手法であり,抑制対象となるモード群は全てネガティブフィードバック可能な振動モード群であり,ポジティブフィードバックとなる振動モード群には影響を与えない制御法である.本報は,当該法を一般構造物へ適用することを目的として,平板構造物に近い特性を持つ高架橋道路部を対象とし,高架橋道路を模擬したモデル装置を試作すると共にクラスターセンシング法の適用について検討したのでその結果を示す.

     

    2 .直線構造物(直線部)のクラスター化

     単純支持された矩形平板が固有に持つ振動モードのクラスター化についてはこれまでに種々の報告1-5)を行ってきたが,複雑な形状となる一般構造物のクラスター化についてはまだ研究されていない.本報では,高速道路高架橋部をモデルとした二辺が自由−自由,二辺が複数の点接触により支持されているリブ付き高架橋道路モデルの振動モードクラスター化について示す.まず,試作した高架橋道路モデルの外観を図1 に示す.実験に用いたモデル装置は1.8m ×0.9m ×6mm の平板に20mm ×4mm のリブが6 本入った仕様となっている.さらに,リブ端が弾性体(硬質ゴム)により支持されている.材質は平板,リブ共にアルミニウムを用い,モデルの寸法は高架橋道路の1/20 (上下線が一体となった直線高架橋道路)とした.アルミニウムを用いた理由は,縮尺モデルの固有振動数を実際の道路部固有振動数に近づけ,低周波振動抑制の知見を得るためである.また,対象とする周波数範囲は,ゴムタイヤが路面を励振する周波数帯域である200Hz 以下として解析,実験を進めている.

     

    図1 高架橋道路モデル外観図

     

     

    図2 分類された振動モード形状(FEM 解析結果)

     

     図1 に示すような一般構造モデルの振動解析を行うため有限要素法を用い振動モードの抽出を行った.図2 は,高架橋モデルが励振された際の振動モード形状をx (長手方向)およびy 軸ごとに奇数/偶数に分類した結果(整理の都合から16 番目のモードを偶数/偶数モード欄に入れているが奇数/奇数モードである)を示す.ここで0 次モードの扱いであるが本報では,自由−自由の境界条件に存在する0 次モードは自由−自由の最低次モード,1 次モード(奇数)として扱っている.図に示されているようにリブ付き平板には200Hz の帯域内に16 個の振動モードが存在している.それらの振動モードを4 種類に分類した結果を考察する.まずは,モード形状の4 隅に注目していただきたい.奇数/奇数に分類された振動モード群は,4 隅の変位量が全て同相であり,等しい振幅量(対称性を利用)となっている.また,偶数/偶数では,隣り合う隅は振幅量が等しく,位相は逆相となっている.これらを整理すると各モード群は,次式に示すセンシングを行うことでクラスター化され,目的外の振動モードは全て検出しないセンシングが可能となる.


    奇数/奇数モード=S +S +S +S
    奇数/偶数モード=S +S −S −S
    偶数/奇数モード=S −S +S −S
    偶数/偶数モード=S −S −S +S ・・・・・・(1 )

    ただし,S は4 隅(対称位置)で検出される振動量とする.

     

    図3 クラスターセンシングされた振動モード周波数特性(実験値)

     


     解析で得られた結果を実験により確認する.リブ付き平板の4 隅(長手方向をx とする.x =18cm ,162cm ,y =0cm ,90cm)に加速度ピックアップを取り付け,式(1 )に従いセンシングすると図3 となる.外乱信号は200Hz までのランダム信号を用い動電型加振器(x =35cm ,y =0cm )を駆動している.図は左上から奇数/奇数モード,右上が奇数/偶数,左下が偶数/奇数,右下が偶数/偶数モードとなっている.測定誤差による目的外の振動モードが若干確認できるものの,目的とした振動モードだけをセンシングしている.たとえば,奇数/奇数モードでは,目的とした(1,1 ),(3,1 ),(1,3 ),(3,3 )モード(実験では(5,1 )モードが200Hz を越えているため4 個のモードとなっている)の共振部が30dB から50dB と卓越して確認でき,他の11 個の振動モードはキャンセルされ検出していないことがこの図から分かる.すなわち,形状の対称性を利用することにより簡単な和,差で振動モードを差別化することが可能となる.

     さらに,相反性を利用し,センサ位置にアクチュエータを取り付け式(1 )の符号と同じ加振力を与えることでクラスターアクチュエーション2)を行うことができ,クラスターセンシング,クラスターアクチュエーションを用いることで目的とした振動モード群だけの抑制2)が可能となり,他の振動モード群に影響を与えない制御系構築が可能となる.

     

    3 .扇状構造物(カーブ部)のクラスター化

     前章において,道路部直線部分のクラスターセンシングについて述べた.つぎに,カーブモデルとなるリブ付き扇状構造物のクラスター化について考える.単純に考えると矩形平板のx およびy をR およびθに変換することでクラスター化が可能となりそうな予測ができる.しかしながら,扇状構造物を有限要素法により解析を行い構造物が固有に持つ振動モード形状を考察すると,矩形平板とは異なった振動モード形状となる.図4 に,有限要素法で得られた扇状構造物の振動モード形状を示す.カーブモデルの形状は,短辺(R1)=0.9m ,長辺(R2)=1.8m ,θ=45 度,板厚6mm の扇状平板に20mm ×4mm のリブが6 本入った仕様となっている.1 次の振動モードでは,中央が変形する形状となっているが自由−自由支持の長辺と短辺では長辺の振幅が大幅に変動しているのに対し,短辺では殆ど変位が観測できないレベルまで振幅が低下している.2次のモードは長辺と短辺の位相が逆転している形状であり,長辺と短辺共に振幅が確認できる.さらに,3次のモードでは長辺に2つの振幅を持つ山と谷が確認できるが,短辺では山と谷が確認できない形状となっている.上述のように自由−自由支持の方向であるR 方向に対称性がないため矩形平板と同様の扱いができない.そこで,R 方向のクラスター化については行わず,θ方向のクラスター化について検討する.長辺エッジ近傍対称位置に2個のセンサを設置し,その和,差を考える.和をとることで奇数次モードのセンサ出力が2倍となり,偶数次モードはキャンセルされる.逆に差をとると偶数次モードが2倍となり奇数次モードがキャンセルされる.すなわち,2個のセンサの和,差をとることで振動モードを奇数モード,偶数モードに分離グループ化することができる.


    奇数モード=S +S
    偶数モード=S −S ・・・・・・(2 )

    リブ付き扇状構造物の実験結果を図5 に示す.θ方向の対称位置(R =1.8m ,θ=4.5 度,41.5 度)に2個の加速度センサを取り付け振動モードの奇数,偶数分離を行った.上図が奇数モード,下図が偶数モードをセンシングした結果である.センサ感度のばらつき,設置位置誤差による目的外の振動モードが若干確認できるものの,目的とした振動モード(奇数モード5 個,偶数モード3 個)の和がセンシングされている.このクラスターセンシングを用いることで扇状構造物の振動モード群を分離することができ,さらに相反性を利用したアクチュエータを用いることで目的とした振動モード群を安定に制御することが可能となる.


     

    図4 扇状構造物の振動モード形状(FEM 解析結果)

     

     

    図5 クラスターセンシングされた振動モード周波数特性(実験値)

     


     

    4 .まとめ

     

     高架橋道路を模擬した実験モデルを用い,二辺が自由−自由,二辺が複数の点接触(弾性支持)により支持されているリブ付き構造物(直線,扇状構造物)のクラスターセンシング法について示した.その結果,クラスターセンシングの特徴である目的外の振動モードをセンシングすることなく特定の振動モード群のみのセンシングが可能であることを示した.

     

    参考文献


     1 )田中信雄・菊島義弘,”分布定数系構造物の振動制御に関する研究(クラスタ制御の提案)”,機械学会論文集(C 編),64- 619(1998- 3),780- 787
     2 )田中信雄・菊島義弘,”クラスタ制御による分布定数系構造物の振動制御について”,機械学会論文集(C 編),64- 619(1998- 3),788- 796
     3 )田中信雄・菊島義弘,”クラスタ・フィードフォワード制御による分布定数系構造物の振動制御について”,機械学会論文集(C 編),64- 622(1998-6),1940- 1948
     4 )田中信雄・菊島義弘,”分布定数系平板構造物のクラスタ制御に関する研究(振動放射音響パワーの抑制について)”,機械学会論文集(C 編),64-627(1998- 11),4231- 4239
     5 )田中信雄・菊島義弘,”分布定数系平板構造物を対象とするスマートセンサ・クラスタフィードバック制御系の安定性について”,機械学会論文集(C編),66- 646(2000- 6),1793- 1799
     

    [発表者]

    機械技術研究所 極限技術部 振動制御研究室 菊島 義弘
             TEL :0298 −61 −7146
             

    [連絡先]

    機械技術研究所 統括研究調査官 千阪 文武
             Tel: 0298-61-7034, Fax: 0298-61-7033
             chisaka@mel.go.jp

     


     

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