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通商産業省 工業技術院
機械技術研究所
統括研究調査官室

 


 

SQUID応用非破壊損傷解析技術

基礎技術部 材料物性研究室 鈴木 隆之

 

機械研NEWS,1999,No.2より

機械研NEWS,1999,No.2 PDF file(250kb) へ

はじめに

 SQUID(Superconducting Quantum Interference Device;超電導量子干渉素子)は超高感度の磁気センサーであり,生体磁気計測の分野,量子物理学の分野等の先端技術分野で実用化されている.最近では新たな非破壊検査のツールとして金属材料の損傷や欠陥の検出への適用が試みられてきており,その実用化のためには得られたデータの解析手法の確立が急務となってきている.

 基礎技術部材料物性研究室では,超電導電力応用機器の構造健全性確立のために,極低温下,および強磁場・極低温下における破壊力学特性評価を行っている.それと同時に,極低温構造材料の損傷欠陥評価を行うために,SQUIDを用いた非破壊損傷解析技術に関する研究開発に取り組んでいる.

 

SQUID非破壊損傷解析装置

 用いたSQUID非破壊損傷解析装置の構成を図1に示す.磁気シールドルーム,SQUID素子を含むSQUID計測系,クライオスタット,X−Yステージ,ガントレー,データ処理用コンピューター等より構成されている.

 磁気シールドルームは,電磁遮蔽のための亜鉛綱板を用いた電磁シールドルームと,パーマロイ板を用いた低周波磁気シールドルームからなる2層構造である.その静磁界の遮蔽率は1/100以上である.また,ドア近傍を除いて十分な均一性を有している.

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 SQUID素子は,リングサイズ50μm×50μmの薄膜型マグネトメータータイプのDC・SQUIDである.空間分解能の向上を図るため,磁気検出コイルは使用していない.クライオスタットにはFRPを使用しており,その底部厚さは4mmである.X−Yステージ,ガントレーには,アルミ素材および樹脂等の非磁性材料を使用し,測定に可能な限り影響を及ぼさないようになっている.

 SQUID出力の測定,X−Yステージの制御,データの取得はすべてシールドルーム外に設置されているコンピュータを用いて行うことが可能である.

 

模擬欠陥および模擬損傷材の解析

 フレキシブル磁気ディスク板により作成した模擬欠陥材のSQUID出力分布を図2に示す.試料−SQUID素子間の距離Z=5mmにおいて,模擬欠陥寸法b=5〜20mmまで変化させている.いずれの場合も模擬欠陥およびその近傍にてSQUID出力の低下が確認されるが,その寸法,位置等は正確には決定できない.そこで,以下のような簡易評価・解析手法を提案した.

(1)隣接点差分解析法(Adjacent Data Difference Method;以下ADD法):隣接する2測定点間のSQUID出力の差と測定位置との関係を求める.測定対象物の端点、相の境界は極値として表される.

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(2)リファレンスデータ減算解析法(Reference Data Subtraction Method;以下RDS法):初期状態のSQUID出力Boをリファレンスデータとし,欠陥や損傷が存在する場合のSQUID出力Bとの差|B−Bo|を求める.

 模擬欠陥寸法DとADD法により求めた欠陥寸法dの関係をまとめて,図3に示す.D>ZではD=dがほぼ成立し,ADD法による解析が可能であることがわかる.

fig

 

 図4にはリファレンスデータに模擬欠陥寸法D=Ommの場合のSQUID出力を用いてRDS法により解析した結果を示す.模擬欠陥寸法とSQUID出力の差|B−Bo|には一対一の対応関係があることがわかる.さらに,D<Zの場合には両者は直線関係でほぼ近似することが可能である.したがって,両者の関係を予め取得していれば,SQUID出力の差より欠陥寸法を推定することができる.

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 以上の結果,D>ZではADD法により,D<ZではRDS法により欠陥寸法の推定が可能であることがわかる.

 円形状の模擬損傷材について,RDS法により求めたSQUID出力の差の最大値|B−Bo|maxと損傷面積の関係を図5に示す.|B−Bo|maxと損傷面積の問にはほぼ直線関係が成立する.したがって,|B−Bo|maxの測定より,損傷面積の推定が可能である.

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疲労損傷の解析

 代表的な極低温構造材料であるオーステナイト系ステンレス鋼の極低温疲労損傷解析結果を図6に示す.疲労試験を行う以前のデータをリファレンスデータとしてRDS法により解析を行っている.RDS法を用いることによりき裂先端の高変形領域を中心にはぼ対称的なSQUID出力分布が計測される.疲労き裂進展によりき裂先端近傍に形成され 極低温疲労き裂進展特性を支配するα’−マルテンサイトに起因する微小磁場変化を検出していると考えられる.また,疲労き裂先端とSQUID出力差の最大値|B−Bo|maxはほぼ対応している.したがって,本手法により極低温疲労損傷および疲労き裂寸法の推定が可能であることがわかる.

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おわりに

 超高感度の磁気センサーであるSQUIDを用いた新たな簡易評価・解析法について概説した.SQUIDの非破壊損傷評価技術に関する研究は端緒についたばかりであり,今後他の先進材料への適用可能性の検討,位置分解能を向上させるための計算力学的手法の開発等を実施する必要があると考えられる.

(文責:鈴木 隆之) 

 


 

 

[発表者]

機械技術研究所 基礎技術部 材料物性研究室 鈴木 隆之

         Tel: 0298-61-7173, Fax: 0298-61-7167

[連絡先]

機械技術研究所 統括研究調査官室 千阪文武/石塚一則

         Tel: 0298-61-7034, Fax: 0298-61-7033

         chisaka@mel.go.jp,ishizuka@mel.go.jp

 

 


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