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通商産業省 工業技術院
機械技術研究所
統括研究調査官室

 


 

家庭のエネルギー消費パターンの計測

エネルギー部 エネルギー変換研究室 倉田 修
TEL:0298−61−7261

 

機械研 NEWS 1999,No.12より

機械研 NEWS 1999,No.12 PDF file(366kb) へ

 


1.はじめに 

 家庭における省エネルギーは,これまで,各種機器の高性能化や新しいエネルギー源の導入によって行われ,エネルギーシステムとして考慮されたものは少ない.各機器の技術的進歩には限界が有り,コジェネレーション(熱電気併給)的なエネルギーシステムを導入することでさらに省エネルギーを進めることができると考えられる.さらに将来は,代替エネルギーによる,自立型の家庭規模のエネルギーシステムも実用化されよう.

 このようなエネルギーシステムの熱電比や蓄エネルギー比を設計するためには,エネルギー需要側のエネルギー消費パターンを知る必要が有る.既存のエネルギー消費の調査例としては,家庭エネルギー消費の平均値の統計2),集合住宅単位のコジエネレーションに関連した,電力又はガス量の時間毎の消費量調査3),スーパー・コンビニ内電気機器の消費パターンの調査l)などが有る.しかし,これまで,家庭内のエネルギー消費パターンを電力とガスで同時に短い時間間隔で調べた例は無かった.

 家庭規模エネルギーシステムでは,このような家庭規模のコジエネレーションシステムを想定し,家庭のエネルギー消費パターンの調査を,今年春から開始した.そこで,この計測装置と計測結果について紹介する.

 

2.計測装置と調査方法

 家庭内で消費されるエネルギーには,電気,ガス,暖房用の灯油,自動車用のガソリンが有る.このうち,電気とガスは計量されており,さらに計測装置を付加して消費量の時間変化を測定することも容易である.一方,灯油とガソリンの消費量の計測は難しいと考えられる.そこで,電気とガスの消費量のみ計測し,灯油とガソリンの消費量は調査用紙に記入して頂くことにした.

 

2.1 電力・ガス消費パターン計測装置

 電力とガスの消費量の計測に際しては、極力,電源・ガス系絞に影響を与えないよう,電力消費量の測定には積算電力計とクランプ型電流センサを,また,ガス消費量の測定はガスメータの計量値を画像化し,ノートパソコンに保存後,画像ファイルを読む方法を採用した.表1に電力・ガス消費の計測方法と使用した機器を示す.ガスメータ計量用のCCDカメラの周囲を覆い,照明用LEDを設けることで画像の明るさを一定に保った.通常,屋外に有るガスメータを撮影するCCDカメラとビデオ信号取込み回路との接続には 延長ケーブルとドア通過用にフラットケーブルを組合せて用いた.また,CCDカメラには強い陽射しによる温度上昇や雨の侵入を防ぐ工夫を施し,ネコなどの小動物に壊され難いように設置した.

表1 電力・ガス消費の計測方法と使用した機器(ソフト)

表1

 

 

2.2 調査方法

 今回,調査に協力して頂いた,つくば市とつくば近郊の三家庭のエネルギー消費実測の概要を表2に示す.A家はつくば市内の2人世帯で集合住宅に住む.B家はつくば市内の4人世帯で戸建てに住み,太陽熱を利用している C家はつくば近郊の2人世帯で戸建てに住む.表2には,電気機器・ガス機器の構成も示した.

 測定期間は土日を含む一週間連続とし,春夏秋冬の4回計測を行ない,季節毎の影響も調べる予定である.調査の際,家族構成,電気機器・ガス機器の構成,太陽光・熱の利用,一ヵ月の灯油へガソリン消費量などを回答用紙に記入して頂いた,計測期間中の天気,おおよその最高気温は研究者側で記録した.

表2 家庭のエネルギー消費実測とエネルギー機器の構成

表2

 

 

3.計測結果

 

3.1  瞬時消費量と積算消費量

 電力・ガス消費量計測結果を図1に示す.横軸は時刻(0時から24時),縦軸は,瞬時ガス量kW,瞬時電力kW,積算エネルギ−MJを示す.計算に当たり電力は計測装置分(53W)を除き,都市ガス13Aの発熱量は382MJ/m3とし換算した.

 図1(a)にA家の5/3,5/5,5/7のデータを示す.いずれの日にも共通な特徴として,(1)瞬時ガス量が比較的短時間の使用を表すパルス的な様相を示すこと,(2)瞬時電力にはオーディオ機器や時計などの待機電力,冷蔵庫の周期的なON/OFFや調理器具のパルス的な様相が含まれること,(3)食事時間に対応してガスと電気の調理器具の使用はパルス的に行われること,(4)瞬時消費エネルギーのピーク値は,電力に比べガスが一桁大きいこと,(5)積算電力は日に依らずほぼ一定になることなどである.(3)のパルス的使用の周期が異なることを除けば,同様の傾向は図1(b)B家,(c)C家にもあてはまる.

 図1(b)にB家の6/15(晴,25℃),6/16(一時雨,32°C),6/18(雨,21℃)のデータを示す.B家は太陽熱を利用し,家屋冷却用の換気扇やガス炊飯器を有している.このため,給湯用のガス消費はA家やC家に比べ少ない.一方,太陽熱温水器用の水ポンプやブロワーの動力が必要になり,照明の必要の無い昼間も,電力のベースラインがA家やC家に比べやや大きくなっていると思われる.

 図1(c)にC家の5/20,5/22(休日,晴,22℃),5/23(休日,晴,25℃)のデータを示す.非勤労世帯という特性から生活リズムは大きく変化せず,電力・ガス消費パターンもほぼ一定である.

図1

図1 電力・ガス消費量計測結果

 

 

3.2 電力・ガス消費エネルギーの全国平均との比較

 図2に電力・ガス消費エネルギー比(計測期間中の平均)と全国平均の家庭用エネルギー比2)(1997年)を示す.今回は春の計測であり,灯油を熱源として用いないと考えれば,A家,B家、C家と比較する全国平均の家庭用エネルギーは,灯油を除いた電気とガス(都市ガス+LPG)であろう.A家,B家,C家とも電力・ガス比は4:6で全国平均の電力・ガス(都市ガス+LPG)比4.6:5.6とほぼ同じである.太陽熱利用のB家は電子レンジや電気炊飯器を使用せず電力消費を抑えているため結果的に電力・ガス比が他と同じになったと考えられる.

 電力消費はA家7.9MJ/人日,B家4.2MJ/人日、C家12.6MJ/人日であり,B家くA家くC家となっていた.A家,B家,C家を合せた電力消費は平均で82MJ/人日と全国平均の電力消費11MJ/人日(一世帯4人と換算)よりやや少ないが,これは,今回,気候の温暖な春に測定したため,夏期や冬期の冷暖房エネルギー分が含まれないことが影響したためであろう.

 また,ガス消費はA家10.7MJ/人日,B家49MJ/人日,C家182MJ/人日であり,B家くA家くC家となっていた.B家が特に少ない理由は太陽熱を利用しているためである.A家とC家を合せたガス消費は平均で14.5MJ/人日と全国平均のガス消費13MJ/人日よりやや多い.このように,電力・ガス消費量の値や比を全国平均と比べても大差の無いことから,今回の春の計測に関しては,このガス・電力消費エネルギー比を家庭規模エネルギーシステム供給側の熱電比として用いて良いといえる.

図2

図2 電力・ガス消費エネルギー比と全国平均の家庭用エネルギー比

 

 

3.3 待機電力の評価

 図3の電力内訳は,一日の電力消費を待機電力,冷蔵庫とその他に分け示した.待機電力は図1の瞬時電力の最低値から,また,待機電力と冷蔵庫の電力和は,図1の積算電力の最小勾配の線から求めた.一日の電力消費のうち,待機電力が16%〜45%,冷蔵庫が24%〜31%,その他が31%〜56%を占め,待機電力の比率を無視できない5)ことが分かる.図4にA家の待機電力の内訳を示したが,時計機能などの記憶保持やリモコン機能,蛍光管表示など合せて63Wとなっている.なお.この図4には電気ポット,電気炊飯器,温水洗浄便座などの保温用電力は含まれていない.このように待機瞬時電力は小さいが,連続的に使用しているため積分され、電力量や総電力消費量に占める割合は大きくなる.

 このような記憶保持やリモコン機能,蛍光管表示などの待機電力は,家庭規模エネルギーシステムが実現される頃には,大幅に削減されると予想される5).このため,エネルギーシステムの必要最低限の定常負荷としては,電気ポットなどの保温用と冷蔵庫用の電力を勘定に入れれば良いだろう.

図3

図3 電力内訳

 

図4

図4 A家の待機電力の内訳(数字はW数)

 

 

3.4 今後の課題

 ところで,家庭規模エネルギーシステムの蓄エネルギー比を決めるためには,定常負荷で賄えないエネルギー消費ピークの大きさを考慮する必要が有る.すなわち,エネルギー消費ピークの量と最大値などにより,発電出力に対する蓄電池や給湯タンクの容量及び,発電機の運転間隔などが制約される.図1の各ピークについて,(1)ピーク付近のエネルギー積分値と一日分のエネルギー消費量との比,(2)ピーク値と一日の平均値との比を計算し,それらの値の大きいものを表3にまとめて示した.表3の番号1から9は,各々図1のピーク1から9に対応している.上記の(1)と(2)は,電力に対して最大0.11及び10,ガスに対し最大0.76及び74となっている.このピークの評価については,季節他の違いによる基準値の取り方や整理の仕方など検討すべき点が有る.また,ピークの大きさ以外にも,その周期や頻度も問題となる.これらを含め,エネルギー消費パターンの統計的解析,その他季節毎のデータの拡充,典型的なエネルギー消費パターンのモデルの作成などは今後の課題である.

表3 エネルギー消費ピークの特性

表3

 

 

「参考文献」

1)倉田,高橋,長谷川,家庭のエネルギー消費パターンの計測,機械技術研究所研究発表概要,(1999.7),p.34

2)(株)住環境計画研究所,家庭用エネルギーハンドブック(1999年版),(財)省エネルギーセンター,1999

3)(財)産業創造研究所,添付資料1−家庭用エネルギーの消費の現状と消費パターンの設定.平成9年度通産省委託調査 − 平成9年度家庭設置型小規模分散型エネルギーシステムに関する調査報告書,(1998.3),p.75

4)鷲頭,商業部門における電力消費実測調査からの一考察エネルギー経済,25巻,8号,(1999.8),pp.2-21

5)(財)省エネルギーセンター,電気協会雑誌(1998.2),pp.4-11

 

 


 

[連絡先]

機械技術研究所 統括研究調査官室 千阪文武/石塚一則

         Tel: 0298-61-7034, Fax: 0298-61-7033

         chisaka@mel.go.jp,ishizuka@mel.go.jp

 

 


 

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