![]() |
|
機械量子分子工学特別研究室の位置付け
HOMEはじめに
工業技術院機械技術研究所においては、エネルギー・生産・ロボットを研究の3本柱とし、マイクロ化・自律化(機械・システムの自立・知能化及び他との協調)・コンカレント化(異分野技術との融合化、同時並行化、環境調和化)を3つの重点方向として、人間・環境調和型高度機械技術の創造を目指して研究を進めている。特に、研究の重点方向の一つであるマイクロ化は、機械や加工等の極限化、特に超微細・精密化を目指すものであり、「マイクロマシン」技術の研究開発などですでに積極的に研究を進めてきている。このマイクロ化をさらに強力に推進することにより、ミクロな観点からのブレークスルーを実現し、新たな機械技術の創造を目指すことを重要な戦略と考え、機械技術研究所においては、新たに「機械量子分子工学特別研究室」(Special Research Group for Quantum and Molecular Mechanical Engineering)を発足させた。
機械量子分子工学特別研究室は、従来の研究部、研究室を横断する目的指向型の組織であり、平成9年7月1日に5年間の予定で所内的に発足し、平成10年4月1日より工業技術院の承認を得た組織となった。以下に、機械量子分子工学特別研究室の目的、位置付け、研究課題について説明する。
機械量子分子工学特別研究室の目的と位置付け
機械量子分子工学特別研究室の目的は、以下の二つである。@ミクロな観点から現象を解明し、そのメカニズムを技術シーズとして確立し、機械技術・機械工学のブレークスルーを生み出し、新たな発展を図る。A量子力学現象・分子動力学現象として現象を解明すると共に、その現象を活用した機械技術を作り上げることにより、機械技術が最先端領域のサイエンスと密接に関連しながら発展していることを実証し、新しい産業を創出する。
機械量子分子工学特別研究室の位置付けをより明確にするため、研究対象の大きさの観点からマイクロマシン技術などとの違いを示したのが、
図1である。図では、表面の微細形状、分子配向の制御等により、ナノオーダーで生じる革新的な機能の発現を目指し、この機能を活用し原子レベルから製品サイズまでを扱う「ナノ機能機械技術」の創出を目指していることを示している。また、研究対象とするエネルギーレベルの観点から見ると、
図2のようになり、従来研究が盛んに行われてきた高エネルギー領域中心ではなく、温度差にして数百K以下の小温度差加熱などのエネルギーレベルの小さい領域を重点的に扱う新しい学問分野「機械量子分子工学」(Quantum and Molecular Mechanical Engineering)の創設を目指していることを示している。さらに、我々の目指すナノ機能機械技術の対象領域を、在来機械技術の精密化、マイクロ化のトレンドと比較すると、
図3のようになり、在来機械やマイクロマシンよりも小さな機能現象のオーダーを目指し、機械技術の未踏領域の開拓を目指していることを示している。


機械量子分子工学特別研究室の研究方針
機械量子分子工学特別研究室は、機械技術のマイクロ化に技術的なブレークスルーを創出することを目標に、量子力学的効果、分子集合体におけるナノ現象などのメカニズムの基礎的な解明に取り組み、ナノ機能機械技術のシーズを確立し、新しい産業を創出することを目的として研究を行っている。
機械技術のマイクロ化の動向は、大きく以下の3つの方向に分類できると考えられる。
(1)「マイクロマシン」の進展、実用化:微小機械要素の組み合わせによる新機能の実現を目標とする「マイクロマシン」の技術・概念が一層進展し、医療用、昆虫ロボットなどへの応用を目指す。この動向は、さらに、生物の細胞レベルの微細メカニズムの解明と模倣分子機械への研究へと進み、鞭毛、筋肉などのメカニズムを活用する機械要素、エネルギー変換方法の研究へと進展する。
(2)「ダウンサイジング工作機械」への挑戦:移動可能な工作工場を目指すと共に、新機能を求める試みであり、省エネ・高精度化・省資源・省スペースがキーワードである。
(3)ミクロな現象を活用するマクロ機能の実現:工学的応用の可能性のある自然現象のミクロなメカニズムの解明とマクロ現象の制御への応用を目指す。さらに、ナノ構造、極短パルスレーザーなどの技術の高度化に伴うマクロに応用できる新機能の発現を目指す試みである。
本機械量子分子工学特別研究室では、新しい切り口であり、かつ、従来あまり研究されて来ていない「ミクロな現象を活用するマクロ機能の実現」を目標に、研究を精力的に推進している。具体的な研究目標は、先進加工技術とエネルギー技術の高度化の実現に設定し、現在、基礎現象のミクロな視点での解明、マクロな機能を持つ技術としての確立に取り組んでいる。
中期計画としては、先進加工技術では、「ケモメカニカル先進加工技術」の確立を目標としている。この研究では、ガラスやセラミックスなどの脆性材料が、水溶液中で割れにくくなる現象(ケモメカニカル効果と呼ばれる)を活用し、ガラスの非球面微細加工技術に発展させ、光ファイバー用分光素子のコンパクト化などの新機能表面創製技術を確立することを目指している。
エネルギー技術の高度化では、工学的応用の可能性のある自然現象で、ミクロな視点が本質的に重要で、メカニズムが解明されていない現象を取り上げ、ミクロなメカニズムの解明とマクロな現象の制御への応用に取り組んでいる。具体的には、「不凍化蛋白質のメカニズムを活用する氷の流動化」、「磁場による熱交換器の汚れ防止」、「超微細凹凸面による流動抵抗低減」、「極短パルスレーザーによる表面の清浄化」、「水のクラスターの効果」、「熱電効果のミクロなメカニズム」、「光歪素子のミクロな最適化」を取り上げて、研究している。
具体的な研究課題の概念を示すと、次頁のようになる。まず、種々のナノ現象の解明により、技術シーズとなりうる新しい機能を見いだし、そのメカニズムを、電子の挙動まで考えたミクロな原子、分子オーダーで解明する。例えばミクロ形状加工による撥水性の実現と流動抵抗低減技術、脆性材料のマイクロトライボロジー現象の解明と高速加工への展開などが課題として挙げられる。一方で、ナノ現象を生じさせる表面形状を機械加工で実現する高速広域三次元ナノ加工技術の実現を目指す。この技術は、当所で研究開発を進めてきたダイヤモンド切削による精密微細加工技術を基に、深さ方向の広域切削化、10mKオーダーの加工物温度制御技術、広域ナノ形状計測技術に挑戦する。そして、ナノ現象の解明とナノ現象を具体的に実現させる形状を作り出す高速広域三次元ナノ加工技術を組み合わせ、ナノ機能機械技術を確立し、新しい機械技術への応用を実現する。具体的には、パイプラインや船舶への応用により15%以上の流動抵抗を低減できる新機能界面の実現を目指す。また、水中ではガラスがハサミで切れる現象(大きなクラックが生じにくい現象でケモメカニカル効果と呼ばれる)のメカニズムをミクロな観点から解明し、旋削に応用し、ガラス・セラミックス等の脆性材料の非球面加工を実現し、光多重通信機器用分光素子のコンパクト化に挑戦する。 また、将来の機械技術に活用するべく取り組んでいる量子力学的な効果としては、量子分子動力学的解析から新たに可能性の見いだされた衝突する二原子分子によるより低温界面からのエネルギー吸収による革新的冷却法、電子の動きが制限されるマイクロ薄膜熱電対による温度測定・温度制御法などが挙げられる。(
学問的体系化の説明図添付)

TOP