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非線形機構による多様な運動の生成

 

研究の目的

 機械の制御において,非線形性を排除するか線形化して取り扱うという従来の工学的手法にかわり,機械システムが一般的に持っている非線形性を積極的に活用して,多様性,自律性,知能性を持った有益な運動を作り出すように制御する手法の開発を目指している.ほとんどの機械システムは非線形性を持つので,カオスや分岐現象に伴う多様性・自律性の発現や知能性,新しい機械制御が可能となると期待されている.
 特にマイクロデバイスにおいては,制御装置の複雑化は困難でありエネルギー供給なども考慮すると単純な機構によって多様な運動を発生させる方式が必要とされている,このように,機械の非線形性を積極的に利用し,分岐現象やカオスを発生させ,運動の多様性や環境適応性を発現させる制御手法ないし設計手法を開発することを目的とする。


研究の概要

 本研究では非線形システムを対象に以下の3つの項目,機械運動の多様性,自律性,知能性,を実現することを目的として、単純なシステムから複雑なシステムまでを対象に研究を進めている.

(1)非線形システムによる多様性の発現
 非線形力学システムでは、同じ条件でも異なる運動が共存する状態がある。例えば、非線形振動子に外部から振動入力を与えた場合には、振幅や位相の違う複数の安定状態をとる場合がある。それぞれの状態は安定であるから、小さな外乱に対しては状態を変えない。しかし、パラメータを変えていくと安定状態が不安定状態に変わったり、新たな安定状態が発生するなどの分岐現象が起こる。パラメータを能動的に制御すれば、全体的な条件を変えずに多様な運動を発生できる可能性がある。
 このような、分岐制御によって非線形機械の運動に多様なパターンを発生させる手法を確立するために、単純な1自由度の振動子を例に分岐制御の手法を研究する。次に、1自由度の素子を多数連結した多自由度システムを構成し、空間パターンを選択的に発生させる手法を研究する。

(2)カオス応用による自律的運動機械
 強い非線形性をもつシステムには,上記の分岐現象が起こり,ついにはカオス的運動を行うものがある.特にカオスは発生機構は非常にシンプルでありながら,その運動は非常に複雑で無数の不安定平衡軌道を持ち,微小なエネルギーで軌道の切り替えおよび安定化ができる.これまで切り捨ててきたこれらの非線形性を積極的に利用すると、機械が自律的に運動パターンを生成できる。また、外部環境と運動機構との直接的な相互作用により運動を行うため,高速なセンサや計算機を必要とせず,シンプルな機構で複雑かつ柔軟な運動を行うことができる。現在,以下の研究を行っている.

  • 形状記憶合金を用いた振動機構
     形状記憶合金(SMA)アクチュエータを電気的なカオス発振回路に組み込み,通電加熱によりSMAを駆動する振動子を構成し、温度や機械的負荷などの外部環境の変化に応じて自律的に運動や制御の様式を変化させる機械を実現し、その有用性を探る。

 

  • 磁力により駆動される強制振動子系
     マイクロマシンへの応用を目指し,外部におかれた電磁石によりカオス運動を生成し,内部の微小エネルギー源によりカオス中の不安定周期軌道の切り替えと安定化をおこなって運動を制御する機構の開発を目指す.
カオスアトラクタと不安定周期軌道
不安定周期軌道の

切り替えによる運動制御

  • ロバストなカオス制御手法
     カオスアトラクタ中の不安定周期軌道を安定化するカオス制御の手法を研究する.特に外乱やパラメータ変動にロバストな制御の実現を目指す.

(3) カオス応用による機械の知能化
 上記のような非線形システムに特有の自己組織的なパターン形成は機械の知能化と言えるが、さらにスマート化するためには、外界に対応するだけでなくカオスが積極的に情報を生成するといわれる特性を利用することが考えられる。そのために、カオス情報処理の本質を構成論的に解明し、機械や構造体システムへの応用を図る。つまり、従来排除されてきた非線形性を積極的に機構/構造に取り入れ、カオスによって情報が生成される機械システムを目指す。


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