National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) This page is a page of the former research institute. We stopped updating on March 31.2001.
E-mail to webmaster (Japanese) E-mail to webmaster (English)

マイクロポンプ機構

Click here to English

研究の背景・目標

 マイクロマシン技術は、機械技術に新たな展開をもたらすと期待されるが、特に微小サイズであるということから、通常サイズの場合には無い新しい原理に基づく機構を創出できる可能性を有する。
 物体に働く流体力は、慣性力と粘性力の成分に分けられる。これらの比を表すパラメータがレイノルズ数で、レイノルズ数は流体の振る舞いを決定する重要なパラメータである。流体機器のサイズが小さくなると、レイノルズ数が小さくなり、粘性の影響が著しく生じるようになり、流体の振る舞いが変わる。よって、流体機器のサイズが変わると、望ましい流体駆動のメカニズムが変わる。
 通常サイズの望ましいポンプ形式は、よく知られているように、回転翼(インペラー)を用いるターボ型ポンプやピストン・シリンダーによる容積型ポンプである。しかしこれらは、ミリメートル以下のサイズの小型ポンプのポンプ機構としては、機構構成が複雑であり、また前記のような流体に支配的に作用する現象が変わるので、一般にはマイクロ化に適さない。
 本研究では、マイクロ化に適した新たな流体駆動機構の確立をめざし、流体の物性特性を利用して機械的な可動部を用いることなく流体に駆動エネルギーを伝える機構、微小生物の流体内運動メカニズムを利用した流体駆動機構の開発を目指している。

 

 

流体の物性を利用したマイクロポンプ機構

 

気液相変化を利用したマイクロポンプ機構

 当研究では、流体の気液相変化にともなう熱物性値の大きな変化を利用した機械的可動部を全く必要としない流体圧送機構を考案し、マイクロポンプの開発を進めている。
 図1はレシプロ型容積式ポンプの作用をヒントに、それを機械的な動きを用いることなく、熱力学的に模擬する細管型ポンプの構成である。細管は3つの領域が独立して通電加熱される。流体は、例えば水のように通常は液体の状態で、加熱することにより蒸発する性質のものである。中央部に周期的な通電加熱と自然空冷を繰り返すと、流体飽和蒸気圧の温度依存性と相変化による比容積の変化により、流体は中央部に吐出と吸入を繰り返す。その際、蒸気相の動粘性係数が液相に比べて格段に大きい性質を利用し、吐出と吸入の各過程において流れを止めたい方の細管内が蒸気相になるように両端部の温度を制御すると、細管内の流体を一方向に圧送することができる。内径0.18mm、長さ540mmの細管と水を用いた実験で、本流体駆動機構により、0.5気圧の締切揚程を得た。
 また図2は、加熱区間を多数設け、加熱領域を管方向にスキャンする流体駆動機構である。加熱区間の蒸気が大きな流動抵抗を生むが、加熱領域をスキャンすることにより、管内の圧力分布があたかも弾性管がぜん動運動をする場合(図3)の状況になり、管内の流体を熱源の移動方向に圧送する作用を生じる(図4)。前記と同一寸法の細管による実験で、この流体駆動機構により、0.7気圧の締切揚程を得ている。
 これらの流体の気液相変化を用いた細管内流体の圧送機構は、
  ・構造が極めて単純である
  ・機械的可動部を必要としない
  ・高い製作精度を必要としない
  ・加熱タイミングの制御により、双方向の圧送が可能である
という製作上における微小化への適性がある。さらに、微小化するほど、
  ・温度変化の時定数が小さくなる
  ・流れにおける粘性の影響が増大する(レイノルズ数が小さくなる)
  ・小さなレイノルズ数を維持するのに必要な管路長さが管内径の3乗に比例して短くなる
という点で、作動原理的にも微小化に適している。

【気液相変化を利用したポンプ機構の関連文献】


 

磁性流体駆動

 磁性流体などの極性流体では,通常の流体駆動ポンプで用いられるピストン,弁,回転翼などの機械的可動機構を必要とすることなく,流体の物性が有する機能を利用して流体に駆動エネルギーを伝達することが可能である.ここでは,外部磁場による管内磁性流体の駆動原理をのべ,進行磁場による磁性流体の駆動実験結果の例を紹介する.
磁性流体の性質と駆動原理 
 磁性流体は,直径10nm程度の強磁性微粒子が界面活性剤等によって凝集することなく安定に分散したコロイド溶液である.各微粒子は単磁区構造で粒子一個一個は磁石とみなせるが,熱撹乱によって各粒子の磁化はランダムな方向を向き,無磁場では磁性を示さない.磁場中では各粒子の磁化の方向が揃うようになり,磁性を示して磁場の強い方向へ体積力が働く.また,磁場中では,磁性微粒子の回転運動が磁気力により抑制されるため,流れ場におけるせん断速度に対する抵抗となり,磁性流体の粘度は見かけ上増大する.みかけ粘度の増大は,粒子の回転ブラウン運動の緩和時間と磁化の緩和時間に関係する.磁化の緩和過程は粒子の回転運動と粒子内での磁気モーメントの回転からなるが,前者は粒子間のクラスター形成の程度に影響され,後者は実際の粒径分布の範囲でも粒径に極めて大きく依存する.ここでは以下の2つの現象を利用して外部磁場により,管内の磁性流体を駆動する.
(1)進行磁場と磁化の緩和時間による体積力の発生(図1)
 磁化の緩和時間が影響するような条件では,今まで磁場にさらされていた部分は新たに磁場にさらされる部分より磁化が大きく,同じ大きさの磁場勾配からうける体積力が大きい.その結果,静磁場は流れを止める方向に作用し,進行磁場は進行方向に流れを誘起する.
(2)回転磁界による磁性流体内部角運動量の供給(図2)
 磁場中では,磁性微粒子の回転運動が磁気力により拘束され,磁性流体の粘度は見かけ上増大する.回転磁界中では,磁性微粒子あるいはその凝集物に回転モーメントが作用し,磁性流体内のうず度を励起する角運動量を供給することができ,速度場の形成を助長することができると考えられる.
駆動実験
 磁性流体の駆動部はステンレス製円管(内径15mm)に24個のコイルを巻き,位相差のある6相の交流(正弦波,等)を流して進行磁場を管内につくった(図3).相数,コイル間隔,ピッチ径は,電流波形が正弦波のときに真空中において管内に比較的一様な回転角速度の回転磁場が発生するように決めた.管の両端を水平ループ状に配管し,ループ内の水ベース磁性流体に対して駆動実験を行った.流量は超音波流量計で測定した.進行磁場を定点観測すれば近似的に回転磁界とみなせるが,回転磁界が管内に誘起する流れの方向は磁場の進行方向と逆である.
 実験結果の例を図4に示す.キロHzオーダーの高周波磁場により磁性流体が駆動できた.磁性流体の濃度,磁場強度,電流波形の条件を変えて実験を行ったが,観察された流れの方向は常に磁場の進行方向であり,前記(1)の現象が支配的な流れが生じた.
マイクロ化への適性について
 磁性流体を前記のメカニズムで駆動するには,一般に強い磁界をキロHzオーダーで変動させる必要があり,比較的大きなアンペアターンの電磁石に高周波交流を流すことを必要とする.したがって,コイルにおける発熱が問題である.この発熱量に関してはマイクロ化が有利な方向に作用しない.なぜなら,相似形状の電磁石コイルを考える場合,電流からある無次元距離離れたところに同じ強さの磁界を生じる電流値は代表寸法に比例するが,コイル導線の面積は代表寸法の二乗に比例し,キロHzオーダーの電流では表皮効果を考慮する必要はないので導線単位面積当たりの電流値は代表寸法に反比例するからである.放熱の面では,マイクロ化による優位性が生じる.
 また,ここで実験をおこなった内径15mmの管路では,流れの方向は常に磁場の進行方向であり,前記(1)の現象が支配的な流れが生じたが,より小さい管径系で粘性の影響がより大きくなるとどうなるか,不明である.  

                        

【磁性流体ポンプの関連文献】


 

 

運動微小毛によるマイクロポンプ

 小型の生物は、繊毛、鞭毛など、運動微小毛で推進している。このことは、運動微小毛によって流体を駆動する小型ポンプが、高い性能を示すことを示唆している。運動微小毛によるポンプの開発を目標に、流体力と自分自身の質量に比例する慣性力とで変形する、微小毛群による流体駆動力の測定を行っている。

毛で飛行する昆虫(アザミウマ)
 

                                      

【運動微小毛流体駆動の関連文献】

最終更新日:平成10年8月31日

研究テーマ一覧へ

研究担当:尾崎浩一砂田 茂