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マイクロトライボロジー

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研究の背景・目標

 MEMS(microelectromechanical systems)やマイクロマシンと呼ばれる微小な機械に関する研究が,近年活発になってきている.このような小さな機械においては,質量が寸法の3乗に比例して小さくなるのに対し,表面積は2乗に比例して小さくなるため,相対的に表面の影響が増大する.たとえば図1に示すように,部品の寸法が1/100になったときに,体積は1/106になるのに対し,表面積は1/104になるので,体積に対する面積の比は100倍になる.重力や慣性力は体積に比例するので,マイクロマシンの環境ではこれらの力はほとんど問題にならないが,それに反して表面の関係するトライボロジーの問題が非常に重要になってくると考えられる.
 そこで,表面間力の影響が無視できない環境下でのトライボロジー特性を明らかにし,マイクロマシンなどに適した潤滑方法を開発することを目標に研究を進めている.


図1 マイクロ化したときの体積と表面積

 

最近のトピックス

凝着力と摩擦力の関係

 図2に,銅とシリコンを一定荷重で摩擦したときの垂直荷重と摩擦力,摩擦力測定の前後に測定した平均の引き離し力の関係を示す.垂直荷重が大きくなると摩擦力も増加しているが,垂直荷重がほとんど0のときでもなお,30μN程度の摩擦力が作用している.図3に,図2で示したデータから求めた摩擦係数と垂直荷重の関係を示す.(赤)示す摩擦係数は摩擦中の垂直荷重に引き離し力を加え,その和で摩擦力を除して求めた摩擦係数である.(水色)は単純に摩擦力を垂直荷重で除して求めた摩擦係数である.図3で引き離し力を考慮しないで算出した摩擦係数が低荷重で増加する傾向にあるのに対し,引き離し力を考慮した場合は,ほぼ一定になる.このことは,摩擦前後に測定した引き離し力と同程度の大きさの凝着力が摩擦中にも表面間に働き,それが垂直荷重と同様な働きをしていることを示唆している.

図2 垂直荷重と摩擦力・引き離し力の関係
図3 引き離し力を考慮した摩擦係数

詳しい内容を知りたい方はこちらをご覧ください.

【関連文献】

 

表面間力の低減による潤滑

 垂直荷重が非常に低いときには,凝着力を低下させることによって摩擦力も低減させることが可能である.このような凝着力は,ファンデルワールス力や表面に凝縮した水の表面張力に起因するので,接触面積を小さくすることによって凝着力を減少させることができる.したがって,表面に凹凸をつけることによって,表面間に働く凝着力を減少させ,同時に摩擦力を減少させることができるであろう.そこで,FIB(Focused Ion Beam)を用いて,単結晶シリコン基板上に図4に示すような周期的な山の配列パターンを創製し,そのパターン上の引き離し力と摩擦力をプローブの先端が平坦なカンチレバーを取り付けたAFM(atomic force microscope)を用いて測定した.図5に示すように,摩擦力と引き離し力が突起先端の曲率半径に比例することが明らかになった.このような知見は,磁気ディスクのテクスチャの設計や,マイクロマシンなどの潤滑方法に適用可能である.

図4 FIBで加工したシリコン表面
図5 溝深さと摩擦力・引き離し力の関係

【関連文献】

 

微小突起の摩耗

 微小荷重下の摩擦では,摩擦力が引き離し力の影響を強く受けるため,摩耗によって引き離し力がどのように変化するかを確認することは,工学的にも重要である.そこで,金単結晶の表面に独立した突起を形成し,AFMに取り付けたシリコン製の板ばねで突起を摩擦し,摩耗による引き離し力の変化を測定するとともに,表面形状の変化を観察し,引き離し力と形状変化の関係を検討した.
 FIB装置を用いて,金単結晶板の表面にピラミッド型の突起を作製した(図6).板ばねは,FIBを用いて,シリコン単結晶の梁から,長さ300μmの平行板ばねを削り出した(図7).面スキャンを行いながら,突起と板ばね間の引き離し力を測定したところ,摩擦距離に応じて引き離し力は単調に増加した.また,引き離し力は金突起先端の摩耗によって生じた平坦部の面積に比例することなどが明らかになった.

 
図6 FIBで加工した金突起
図7 微小平行板ばね

【関連文献】

最終更新日:平成11年8月18日

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研究担当:安藤泰久