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〇劉 峰(筑波大学大学院)、古谷博秀(エネルギー部燃焼工学室)
濱 純(企画室)、高橋三餘(エネルギー部エネルギー変換工学室)
昨年のH2-O2-O3の着火実験(1)に引き続き、著者らは、KrFレーザによるH2-O2-O3-Ar混合気流における大気圧条件下の着火実験を行い、最小着火レーザ照射強度へのアルゴン希釈等の影響を調べ、いくつかの知見を得たので報告する。
実験装置は昨年と同じように、オゾン発生装置を付加したガス供給系、内径6mmの供試バーナー、着火用紫外光照射系により構成されている。今回の実験は、H2-O2-O3-Ar混合気流を用いて、圧力は大気圧、予熱温度は常温、混合気流速は3.5m/s一定の条件で行われた。
当量比が1.0のH2-O2-O3-Ar混合気を用いて、各アルゴン希釈率におけるO3濃度と最小レーザ照射強度の関係を実験で求めた。どの希釈率においても、O3の添加量の増加とともに最小レーザ強度は減少することがわかった。アルゴン希釈の効果を分析するため、最小二乗法を用いて指数関数に近似し、内挿及び外挿することによって、O3濃度が0.53%と一定の場合の最小レーザ照射強度とアルゴン濃度との関係を求めた(Fig.1)。アルゴン濃度が55%以内ではアルゴン濃度の増加とともに、最小レーザ照射強度は小さくなる傾向があり、アルゴン濃度が25%から40%までの間で大きく減少していることがわかった。
直接アルゴンにKrFレーザ光を照射しても何の現象も観察されなかったことから、常温ではアルゴンはKrFレーザ光を吸収しないと考えられる。アルゴンは一原子分子であり、同じ熱量を加えても比熱が小さいため温度上昇が大きく、着火に必要な最小レーザ照射強度に熱的な影響をおよぼすと考えられる。アルゴンの熱的な効果を示す一つの指標として、アルゴンの希釈による混合気比熱の変化をFig.2の(a)に示す。図から、アルゴンを60%添加した時の混合気の比熱は、希釈しない場合の約80%程度であることがわかる。一方、反応動力学計算により、希釈したときの着火に必要な最小レーザ照射強度を予測し、Fig.2に示す。結果は希釈しない場合の値で正規化して表示した。その結果、最小レーザ照射強度はさらに小さくなった(b)。さらにアルゴンの第三体効果が小さいことが着火反応に影響していることも考えられるため、次の素反応(2)
H2O2+M=2OH+M k(Ar)=0.875k(H2)
H+O2+M=HO2+M k(Ar)=0.35k(H2) により
アルゴンの第三体効果の違いを考慮して反応動力学計算を行なった。この結果、最小レーザ照射強度はアルゴンの第三体効果によりさらに低減することがわかった。これらの計算からアルゴンの希釈により最小レーザ照射強度が減少する結果が得られ、この点については実験と一致した。しかし、その減少の仕方や、絶対値については、一致しなかった。この原因としては、オゾン濃度が低く、レーザの照射強度の強いときに、多光子過程などさらに複雑な現象が起こっている可能性があり、これらの現象を説明するためには、さらに詳しい解析を行なう必要がある。
KrFレーザによるH2-O2-O3-Ar混合気流の着火における最小レーザ照射強度へのアルゴン希釈の影響について調べ、次の結論が得られた。
(1) 本実験範囲では、着火に必要な最小レーザ照射強度は、アルゴンの希釈量の増加に伴い低下した。
(2) アルゴンの比熱と第三体効果が小さいことを考慮して反応動力学計算を行なった結果、実験と同じく最小レーザ照射強度がアルゴンの希釈により減少する傾向が得られた。
今後、より単純な一光子過程の仮定できる高いオゾン濃度条件での実験を行ない、さらにアルゴン希釈の影響を詳しく検討する予定である。
(1) 劉・古谷・濱・高橋,第34回燃焼シンポジウム(日本燃焼学会),(1996), p.614-616.
(2) Warnatz, J.:Combustion Chemistry. p.197, Springer Verlag New York, 1984.