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機械技術研究所のアクションプラン
−外部評価を終えて−
機械技術研究所
1.
はじめに2.外部評価結果の概要
2.1 総括
国立研究所は、元来、長期的視点に立つ新規分野を開拓し、人類の知的資源を組織的に蓄積および増大させることにより、将来の発展に貢献するべきである。リスクが大きいが飛躍の期待される新規分野を開拓するハイリスクハイリターン型の研究開発や、標準、国際協力等の公共的ニーズがある研究開発、市場原理になじみにくくてもナショナルセキュリティーを確保するために国として取り組む必要のあるミッション的研究開発を進めるべきである。
機械技術研究所は、国立研究所として、産業・社会ニーズに対応するという明確な目的を有した研究を推進するという観点では、ほぼ目的は達せられている。また「エネルギー・環境技術、生産技術、ロボット・医療福祉技術を3重点研究分野とし、マイクロ化、自律化、コンカレント化(3重点方向)を研究の推進方向として、人間と環境に調和したもの作りの基盤技術の研究に取り組む」という、機械技術研究所のビジョンは時宜に適っており、評価できる。
機械技術関連の研究分野では、他の研究分野に比べて産業界が強く、技能やノウハウが重要視され、またポストコンペティティブな研究の側面もあり、国立研究所としての役割を果たすうえでの難しさがある。しかしながら、機械技術研究所は、NIST(米)、NEL(英)など機械技術分野を有する研究所が世界的に少ない中で、わが国では機械技術分野に関する唯一最大の国立研究機関であることから、その責務と期待は大きいものがある。特に日本の産業の将来の発展を支える製造業の中核を担っているのが機械産業であり機械技術であることを考えれば、機械技術研究所は今後も益々の活躍が期待される。
したがって、機械技術研究所はこれらの役割を自覚し、持てる力を最大限に発揮し、より成果が生まれ易い組織運営に努め、次世代のもの作り等に貢献すべきである。
2.2 留意事項
機械技術研究所がその役割を再認識して、アクティビティをさらに増すためには、下記のような点について留意するべきである。
(1)重点研究分野ならびに重点研究推進方向に沿った研究テーマの選定
機械技術研究所のビジョンや研究の推進方向等は理解できるが、重点指向に沿った研究項目が明確に定められることが肝要である。また、研究テーマが総花的の感があり、テーマ数の絞り込みが必要である。
(2)研究体制
所長のリーダーシップに基づく新分野への機動的かつ重点的な展開能力を維持できる体制や仕組みを持つべきである。
また、研究者の顔がより見えるような体制にすべきである。
(3)研究者の確保・育成・評価
民間在籍者を含め、優れた研究者を積極的に採用すべきである。
評価は論文数に留まらず、多面的な評価が必要である。
(4)研究交流(共同研究等)
民間企業との交流・連携を強化すべきである。
(5)研究成果
成果普及を進めるための情報提供活動を強化すべきである。
3.今後の取り組み
3.1 基本方針
機械技術研究所は、製造業の基盤である機械工業分野において、設立以来、その技術開発の進展動向や将来の方向性を把握し、かつ産業、国民・社会のニーズ等を踏まえて、その高度化に努め、先導的役割を果たしてきた。
今日、景気の低迷が長期化し、我が国の経済を支えてきた製造業も深刻な状況になりつつある中で、当所は、今回の外部評価を踏まえ、研究内容・予算・人事の弾力化を可能にする組織・体制等を当所でできる範囲で確立し、経済性、利便性を追求する視点のみではなく、人間・社会システムにも配慮したグローバルかつ長期的視点に立ち、機械技術の特徴である「新しい原理を具現化し、人間と環境にとって将来的に必要なもの作り」の基盤技術開発に今後も取り組んでいく。
その目標として人間・環境調和型高度機械技術の創造を目指し、エネルギー・環境、生産、ロボット・医療福祉を重点分野とし、また、マイクロ化、コンカレント化、自律化を研究の推進方向とする当所のビジョンを基本的に堅持し、当所にポテンシャルがあり、かつ独創的なテーマを重点的に推進していく。
3.2 具体的な取り組み
(1)重点研究分野ならびに重点研究推進方向に沿った研究テーマの選定
所内的にこれまで重点化を進め、かつ外部評価でも評価を受けた、研究分野や研究テーマを積極的に重点支援していく。具体的には材料技術・生体工学分野における機械と医療との融合領域である生体材料・人工臓器等医療機器の設計評価技術、情報・システム技術では機械と情報の融合領域である高度道路交通システム(ITS)、自己修復技術、基礎機械分野におけるマイクロファクトリ、エネルギー・環境技術分野における熱機関、動力機械、LCA、生産技術分野では超精密3次元微細加工、生産ソフトウエア、ロボット技術分野での知能化、高技能化などの研究開発を推進していく。一方、将来、重要技術となる技術分野に関しては、中核技術を形成する自由度の高い研究として担当部長等を中心にテーマの整理や内容の検討を進めることを基本とする。また、所内外横断的なテーマについては、所長裁量のもとでリーダーを任命し、そのリーダーにテーマおよび体制等の裁量を委ねることにより推進する。
これらの重点分野のテーマについては、統括研究調査官室を中核に、各研究分野の所内外の技術開発動向調査を行い、対象とする研究分野やテーマの位置づけ、研究ポテンシャルおよび技術開発体制等を所として自ら分析する体制を組む。また、これらの重点化の分野やテーマについては各分野毎に外部の専門家による評価委員会を設置し、ここでの助言または評価を受け、テーマの選定、推進体制等に反映させていく。この分野別外部評価は、原則として年間に2分野ずつ実施していく。
オリジナリティーのある発明・発見を含んだ、真に創造的な研究やシーズを発展させるテーマなどを主体に、所の方針等との整合性を考慮しつつ、研究テーマの選定を実施していく。また、将来技術として有望な新規テーマについては、フィージビリティスタディ(一年以内)等により十分な準備を行った後、提案を行っていく。
(2)柔軟かつ競争的な研究体制の推進
当所では、研究者からのボトムアップ型の研究テーマ提案が基本的であるが、トップダウン方式の戦略研究をより推進するために、研究推進方向の一つであるマイクロ化の一環として、平成9年7月に矢部量子技術研究室長をリーダーとする機械量子分子工学特別研究室を発足させ、量子力学的効果などのナノオーダーの微小領域で発現される機能を利用する研究を開始し、「顔が見えるテクノロジーの切り口」を実行に移してきている。このように、独創性を重視し、重点投資分野にアタックするプロジェクトは特別研究室またはセンターで実施し、一方、基礎基盤研究等の継続性を重視した研究領域の開拓は現状の部、室の構造で実施していく。
また、所の看板となる開発技術やこれを推進する研究者が国内外で認知されるように、インターネット、所外研究講演会および所内公開等の活用、当所主催の国際会議の開催やプレス発表等を通して、研究内容や研究者についての情報提供を行い、研究所の顔が見える体制に改善していく。
また、研究スペースの各研究テーマへの配分を見直し、効果的な研究推進体制を図る。
(3)研究者の確保・育成および評価
研究テーマを重点化して成果をあげていくためには、優秀な研究者を確保して組織的な研究体制を組むことが必要である。最近の若手育成および招聘型等の任期付き任用制度、各種ポスドク制度、研究支援者制度などをも有効に活用し、優秀な研究者を一人でも多く確保していく。
特に昨今、研究内容が融合領域等に属する傾向が多く、所として重要な研究領域で、かつこれらをリードする研究者に適任者が不在の場合、管理職、シニア研究者をも含めて公募・招聘していく。
また、研究者評価には、著名な学会やジャーナルへの論文発表に加えて、基本特許を取得し民間への技術移転・特許収入を得ることや、論文あるいは技術開発に係わる各種著名な賞を得ることなど客観的、数量的評価を原則とするが、重要なプロジェクトをリーダーとして提案し推進することや、研究分担者あるいは支援者としてプロジェクトに貢献した場合、国際貢献、地域貢献、研究所への貢献なども総合的に評価していく。
(4)産業界等との交流・連携の推進
当所では、研究開発分野が産業に近いこともあり、民間企業との関わりは比較的深いが、さらに、研究者、研究管理者が有する所外の個人的、組織的ネットワークを整理し、活用するとともに、産官学推進センターを中核として産業界、学会、大学等との交流を組織的に進める。また、機械技術研究所の研究テーマについての意見交換を行い、産官学連携テーマへの方策を検討するためのアドバイザリー機関として、外部有識者からなる産学官連携推進委員会を設置する。
(5)研究情報収集機能と成果発信機能の強化
審議会報告等を含む政策や所外研究動向等の情報収集機能と、当所の研究成果・技術シーズ等の情報発信・普及の機能を、インターネット等の利用による新たな体系的・継続的手法によって拡充強化する。さらにはこれらをもとに産業界との交流を、企画室・統括研究調査官室・産学官連携推進センター・業務課等の連携のもとで強力に推進していく。
4.あとがき
今回の外部評価に際して委員長以下評価委員各位には、事前評価から本最終報告書の作成に至るまでに、評価委員会での活発な討論、事前・事後の各評価項目に対する懇切なる補足意見、ならびに当所への更なる建設的な意見などを賜ったことを、ここであらためて感謝する。
当所では、外部評価の結果について、上記の方策の具体化を速やかに取りまとめ、一部は既に実施している。また、当所のみでは対処できない点は工業技術院とも相談の上、改善の努力を払って行く。
終わりに、国立研究所の外部評価は、平成9年8月に内閣総理大臣によって決定された「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」を踏まえ、「通産省技術評価指針」に基づき実施されたものであるが、当所は以前より積極的に外部評価を受けることを希望し、ここに実現したものであったことを付記するとともに、今後とも、外部評価委員会をはじめ、関係各方面のご意見を賜り、国立研究所としての役割を果たしていく所存である。